東急線の日吉駅は、慶應義塾大学の街としても知られる
相鉄の延伸計画がプロジェクトリストに記載されたことは、神奈川県の政財界のみならず慶應義塾の関係者にとっても悲願だった。慶應義塾大学の湘南藤沢キャンパス(略称:SFC)は、最寄駅の湘南台駅からバスに乗って15~20分もかかる場所にある。
SFC一帯には、大学のみならず慶應の中等部・高等部もある。朝の通学時間帯には、約5000人の生徒と学生が湘南台駅からバスを利用しているが、バス停には長蛇の列ができてしまうため、湘南台の駅から45分かけて歩く学生も少なくない。倉見駅までの延伸計画では、相鉄の線路がSFCの目の前を通る。順調にいけば、SFCの目の前にも駅が設置される。
さらに、相鉄と東急は2019(平成31)年までにJR線を介して日吉駅-西谷駅間に直通線を開業させる。この直通線が実現すれば、日吉駅が終点になっている東急目黒線が、湘南台駅まで乗り入れる。東急目黒線は2000(平成12)年から目黒駅で都営三田線とも相互乗り入れを開始している。
つまり、プロジェクトリスト24番目の鉄道は、三田・日吉・SFCという慶應3つのキャンパスを一本の電車で結ぶ構想ということになる。完成すれば、まさに“慶應線”と呼ぶのに相応しい路線になるのだ。
前神奈川県知事も松沢成文は、相鉄の延伸計画を推進していた一人。そして、慶應義塾大学の出身でもある。今回の答申について感想を求めると「相鉄の延伸は、知事として神奈川県全体の発展のために働きかけたものです。私は慶應大学出身ではありますが、身びいきで働きかけていたわけではありません」との回答。神奈川県知事を退いた現在も参議院議員であるために、立場上、個人的な感情を表にすることは難しいようだ。
では、肝心の現役慶應生は、“慶應線”をどう受け止めているだろうか?
「慶應生といっても三田・日吉・SFCで、はっきり受け取り方は分かれています。SFCは僻地にあるので、交通アクセスが向上する”慶應線”は大歓迎でしょう。一方で、これまで日吉駅は東急目黒線の終点でした。だから、日吉の慶應生はほぼ確実に座ることができました。”慶應線”が実現すれば日吉駅は途中駅になり、座ることができなくなります。日吉の慶應生にとってはデメリットの方が大きいように思います。三田の慶應生は、無関心です」と話すのは、慶應義塾大学鉄道研究会代表の矢内洋祐さん。