参議院議員選挙、東京都知事選と続く選挙シーズンに突入した。7月31日に投開票日を迎える予定の東京都知事選には、様々な有名人たちを含めた候補者の名前があがっている。ネットニュース編集者の中川淳一郎氏が、ヘイトスピーチ解消法が成立したことで逆風が吹いている桜井誠氏の出馬表明に着目し、その目的と効果、影響について解説する。
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東京都知事選という目立ちたがりどものカーニバルが幕を開けようとしているが、その中でも注目しているのは、在日特権を許さない市民の会(在特会)元会長・桜井誠の出馬表明である。誰? と思うかもしれないが、大阪市長だった橋下徹と「お前」「お前っていうな」と議論にもならない茶番を繰り広げた小太りメガネの男と言えばわかるかもしれない。
桜井や彼が所属していた在特会がデモやツイッターで展開する主張は、「日韓断交」「在日韓国人が持つ特権を剥奪せよ! 日本人差別はやめろ」「在日は韓国に帰れ」といったものだらけで、基本的には「韓国嫌いな人々による被害者意識&差別意識丸出し発言」が主だ。
通常、泡沫候補は供託金300万円を支払って壮大なる自費出版をするようなものなのだが、桜井の今回の件は彼の目的からすると理に適っている。こうした主張を都知事選によってすることができるからだ。
ヘイトスピーチ解消法ができた今、同法に強制力はないものの一定の抑止力は生んでいる。また、反対勢力(カウンター)の存在もあり、街頭での嫌韓デモは一時期ほどの勢いはない。
そんな中、桜井は政見放送と選挙公報にて主張を展開することが可能になる。過去に外山恒一という候補が「スクラップ&スクラップ」「私が当選したらヤツラはビビる! 私もビビる」と政見放送で主張し、その後YouTubeで公開されて外山は全国区となった。
今回も「あまりにも過激すぎる都知事候補がいる」と桜井の政見放送を見ておもしろがったり、潜在的に韓国に対して反感を持つ者が共感することだろう。桜井は演説自体は上手なものだから、一見聞いていると保守の論客のようにも見える。すると、前回の都知事選で61万票を獲得した田母神俊雄票の何割かを取れるかもしれない。