しかも、いちいち警察に申請をしなくてはいけないデモとは異なり、街頭演説であれば、それなりに自由に行なえる。彼がファンを対象としてニコニコ生放送で主張しているようなことを公衆の面前で言えるようになるのだ。

 また、カウンター勢力は桜井の演説で「レイシストは帰れ!」と反発することだろう。桜井は選挙カーの上から挑発し、カウンターと桜井のスタッフがもみあいになる。この「画」がおいしいとテレビや新聞が桜井の演説を取材するようになり、さらに知名度が上がる。また、憎さのあまり桜井のポスターを剥がすような人間が出て逮捕でもされようものなら「民主主義の敵です!」とさらにアピールできる。

 また、イギリスが国民投票でEU離脱が決定した今、「今や世界のトレンドは『自国最優先』です! 日本も韓国と一切交流を絶つべきです」と自身の主張の正当性を述べやすい状況になった。

 挙句の果てには櫻井パパこと桜井俊と間違えて投票する者も出て票を上乗せできるなど、桜井にとって都知事選出馬はトクすることだらけだ。カンパも集まるだろう。20万票でも取ろうものなら、『20万人から支持された愛国者 我が14日間の闘争』という本を出し、アマゾン1位も獲得することだろう。(文中敬称略)

●なかがわ・じゅんいちろう/1973年生まれ。ネットで発生する諍いや珍事件をウォッチしてレポートするのが仕事。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』など。

※週刊ポスト2016年7月8日号

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