この国の人口は、減っていくことが確定している。であれば、その中でも強い国を作っていこうという戦略を出すことが政治の役割だ。それなのに「GDP600兆円」「希望出生率1.8」などという実現不可能な数字をぶち上げるだけで誤魔化している。
それもこれも、政治屋たちがこの国の未来ではなく、議員を続けて利権をむさぼりたいということしか考えていないからだ。永田町はインモラル議員たちの巣窟になってしまった。
経済再生担当相を辞任した甘利明は、秘書も含めて不起訴処分になった。いま議員たちの間では、「あんなに袖の下をもらって不起訴なら、大臣室で札束を受け取っても大丈夫だな」などという冗談とも本気ともつかないことを言う者までいるという。
東京都知事を辞任した舛添要一など、インモラルの典型だ。
舛添は会見で「違法性はない」と繰り返した。彼は「法律に触れなければ何をしてもいい」と考えていたのだろう。会見で自らを「トップリーダー」と言った舛添は、さしずめ「インモラル・トップリーダー」といったところだ。ボビー・ケネディが主張した「モラル・リーダーシップ」のまったく対極にある。
世の中を良い方向に導き、国民を幸せにしようとする政治家ならば、「違法性があるかないか」などというレヴェルではなく、もっと大きく高い視点で物事を語らなければならないはずだ。そうした視点を持っている政治家が、この国には見当たらない。
※SAPIO2016年8月号