王は2004年に遼寧日林実業グループを創業したほか、食用油の製造販売や大豆など穀物の輸出入を主業務とする丹東パスト穀物加工会社を胡とともに経営。2013年には年間350万トンもの大豆などの穀物を加工するなどの実績を残している。
さらに、王は2004年、陳から丹東港再開発プロジェクトを持ち掛けられ、丹東港集団を結成。港湾の再開発のため、本来ならば17億元もの土地を8分の1以下の2億元を支払っただけで、その権利を掌中にしたとされる。
VOAによると、実はこれには裏話がある。王は陳の口利きを受け、当時の遼寧省トップの聞世震・同省党委書記との面識を得て、陳の米国視察のあと、聞も米国に招待し良好な関係を築く。その後、聞は王に同港の再開発プロジェクトを任せることでゴーサインを出した。市長と省トップを抱き込んだことで、王は巨利を得ることになる。
港の拡幅工事で、市政府などから200億元もの融資を受け、同港の貨物取扱量は2011年には前年比約40%増の7637万トンと、遼寧省では大連、営口に次いで3番目で、全中国の港のなかでも20位にランクイン。
このほか、王は造船会社や原子力発電所の自動制御システムを研究開発する北京和利時科学技術会社なども傘下に収めるなど、遼寧日林実業グループは多数の優良企業を抱えるコングロマリットに発展している。
この裏には、王の政治工作が奏功しているのは間違いない。
●そうま・まさる/1956年生まれ。東京外国語大学中国語学科卒業。産経新聞外信部記者、香港支局長、米ハーバード大学でニーマン特別ジャーナリズム研究員等を経て、2010年に退社し、フリーに。『中国共産党に消された人々』、「茅沢勤」のペンネームで『習近平の正体』(いずれも小学館)など著書多数。近著に『習近平の「反日」作戦』(小学館)。
※SAPIO2016年8月号