ライフ

シングルマザーの息子が短冊に書いた「おとうさん」の真意

短冊に込めた息子の願いは?

 七夕の日、どんな願いごとを短冊に書いたでしょうか──。38才パート勤務の女性Kさんは、息子が書いた短冊に胸が締めつけられたという。Kさんが告白する。

 * * *
 4才の息子と2才の娘を連れ、夜逃げするように夫と別れたのは5年前のことです。酒に酔うと、私だけではなく、息子にまで手を上げるため、養育費もなしで、無理やり離婚しました。

 専業主婦だった私にとって、シングルマザーの現実は厳しいものでした。パートは手取り12万円ほどで、生活をするのがやっと。食事も、ご飯にしょうゆをかけるだけの日々が続きました。

 それでも息子は、「おいしいね」と、笑顔を見せてくれます。私は、そんな子供たちとの生活の中で、(父親なんていなくても大丈夫)と自信を持つようになりました。あの短冊を見るまでは──。

 その年の夏、息子の保育園で、「欲しいもの、なりたいもの」を、七夕の短冊に書くことになりました。園の入り口に飾られた大きな笹には、「ゲーム」「じてんしゃ」など、かわいらしい願いごとが書かれた短冊がたくさん下げられていました。

 息子の短冊を探すと、そこには「おとうさん」と書いてありました。あんな暴力男でも、子供にとっては唯一の父。貧しい暮らしに、さびしい思いまでさせてしまったと、私は離婚を後悔しました。

 息子との帰り際、私は覚悟を決めて、「お父さんに会う?」と聞きました。すると息子は即座に「絶対にやだ!」と。だったら、あの短冊はなんだったのか。

 理由を聞くと、「お母さんがいつも疲れているから、ぼくがお父さんになって、いっぱい働いて、お母さんに笑ってもらいたいの」と言うのです。

 息子は欲しいものではなく“なりたいもの”を書いたのでした。思わず息子を抱きしめました。そんな心配をさせてしまう私は、母親失格です。

 それからは笑顔を心がけるようになりました。すると、それまでよりも毎日が楽しい気がしてきたのです。息子に、大切なことを教えられた、忘れられない七夕になりました。

※女性セブン2016年7月21日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

「新証言」から浮かび上がったのは、山下容疑者の”壮絶な殺意”だった
【壮絶な目撃証言】「ナイフでトドメを…」「血だらけの女の子の隣でタバコを吸った」山下市郎容疑者が見せた”執拗な殺意“《浜松市・ガールズバー店員刺殺》
NEWSポストセブン
連続強盗の指示役とみられる今村磨人(左)、藤田聖也(右)両容疑者。移送前、フィリピン・マニラ首都圏のビクタン収容所[フィリピン法務省提供](AFP=時事)
【体にホチキスを刺し、金のありかを吐かせる…】ルフィ事件・小島智信被告の裁判で明かされた「カネを持ち逃げした構成員」への恐怖の拷問
NEWSポストセブン
グラドルデビューした渡部ほのさん
【瀬戸環奈と同じサイズ】新人グラドル・渡部ほのが明かすデビュー秘話「承認欲求が強すぎて皆に見られたい」「超英才教育を受けるも音大3か月で中退」
NEWSポストセブン
2人は互いの楽曲や演技に刺激をもらっている
羽生結弦、Mrs. GREEN APPLE大森元貴との深い共鳴 絶対王者に刺さった“孤独に寄り添う歌詞” 互いに楽曲や演技で刺激を受け合う関係に
女性セブン
無名の新人候補ながら、東京選挙区で当選を果たしたさや氏(写真撮影:小川裕夫)
参政党、躍進の原動力は「日本人ファースト」だけじゃなかった 都知事選の石丸旋風と”無名”から当選果たしたさや氏の共通点
NEWSポストセブン
セ界を独走する藤川阪神だが…
《セの貯金は独占状態》藤川阪神「セ独走」でも“日本一”はまだ楽観できない 江本孟紀氏、藤田平氏、広澤克実氏の大物OBが指摘する不安要素
週刊ポスト
「情報商材ビジネス」のNGフレーズとは…(elutas/イメージマート)
《「歌舞伎町弁護士」は“訴えれば勝てる可能性が高い”と思った》 「情報商材ビジネス」のNGフレーズは「絶対成功する」「3日で誰でもできる」
NEWSポストセブン
入団テストを経て巨人と支配下選手契約を結んだ乙坂智
元DeNA・乙坂智“マルチお持ち帰り”報道から4年…巨人入りまでの厳しい“武者修行”、「収入は命に直結する」と目の前の1試合を命がけで戦ったベネズエラ時代
週刊ポスト
組織改革を進める六代目山口組で最高幹部が急逝した(司忍組長。時事通信フォト)
【六代目山口組最高幹部が急逝】司忍組長がサングラスを外し厳しい表情で…暴排条例下で開かれた「厳戒態勢葬儀の全容」
NEWSポストセブン
ゆっくりとベビーカーを押す小室さん(2025年5月)
小室眞子さん“暴露や私生活の切り売りをビジネスにしない”質素な生活に米メディアが注目 親の威光に頼らず自分の道を進む姿が称賛される
女性セブン
手を繋いでレッドカーペットを歩いた大谷と真美子さん(時事通信)
《「ダサい」と言われた過去も》大谷翔平がレッドカーペットでイジられた“ファッションセンスの向上”「真美子さんが君をアップグレードしてくれたんだね」
NEWSポストセブン
パリの歴史ある森で衝撃的な光景に遭遇した__
《パリ「ブローニュの森」の非合法売買春の実態》「この森には危険がたくさんある」南米出身のエレナ(仮名)が明かす安すぎる値段「オーラルは20ユーロ(約3400円)」
NEWSポストセブン