事件発生直後、浅田の犯行は、暴走した高齢者のなれの果てかのように伝えられていた。しかし公判では、こんな事実が明らかになった。
まず、佐々木さんが20年以上にわたってクレームをつけていた生活排水問題は、佐々木さんが排水路を埋めて水の流れが変わったことが原因で起こるなどしたもので、浅田が非難されるいわれのないものだった。
また佐々木さんの迷惑行為に悩まされていたのは、浅田夫妻だけではなかった。過去、別の隣人に「おれの車に車をぶつけた」と文句を言って金をせびった上に、その隣人の自宅の玄関先に鎖をつけて出入りできなくしたりといった嫌がらせを行い、引っ越した人もいたという。ある女性住民がため息交じりに振り返った。
「佐々木さんは、住んでいた家の大家のおばあちゃんにもよく怒鳴っていました。
鎌のついた棒を持って自宅に上がりこんで、警察が来たこともありました。警察に相当怒られたから、さすがにそれからは家に上がらなくなったようです。でも今度は玄関先での暴言が酷くなり、“くそばばあ、お前が生きてる価値はないんだから、死んでしまえ”とわめき散らしていたそうです。おばあちゃんは“相手にしたらおしまいだから”って静観していましたけど、かなり精神的にこたえたと思います」
浅田夫妻もずっと耐えていた。それも20年間、ずっと。証人として出廷した彼の妻は、佐々木さんから受けていた嫌がらせに話が及ぶと涙を流し、裁判が一時中断する場面もあった。
「被告は冷静に受け答えをしていましたが、奥さんは感情があふれたんでしょう。家では常にカーテンを閉めて声を潜めて生活し、外で佐々木さんに会うと怒声を浴びせられ、脅迫めいたことを言われた。ものすごくつらい生活だったと涙していました」(全国紙記者)
先祖代々の地主で、正義感が強かったという浅田は、住民たちにも頼られる存在だった。その彼は公判でこうも述べている。「(これ以上佐々木さんが)みんなに迷惑をかけないよう殺した」と…そんな彼に、減刑を求める地元住民らの署名は1000人にものぼった。5月に判決公判は行われたが、同情できる面もあった点から求刑懲役14年に対し、懲役9年の判決が浅田に言い渡された。
※女性セブン2016年7月21日号