◆居酒屋の生搾りサワーを目指す
「理想のチューハイは何ですか」
宮广さんはあらかじめキーになる質問を準備していた。
「その質問に対して、多くのお客様の答えが一致したんです。しかもみんなが同じように手のひらで果実を搾る、スクウィーズのジェスチャーをしながら話してくれることが印象的でした」
一致した答えとは、「居酒屋の生搾りサワー」。目の前で果汁を搾りジョッキに注ぎ入れるライブ感。そのイメージこそ、消費者が理想のチューハイだと感じている「新鮮さ」だった。作りたて。果実の味わい。搾った手に残る爽やかな香り。ポイントになるテーマが見えてきた。
切り口は「新鮮」「果実」に定まった。だが、そうしたテーマを謳った類似商品はごまんとある。自社にしか作れない「新鮮」「果実」というコンセプトを表現した新商品をいかに仕上げていくのか。
まず収穫した後24時間以内に搾った果汁だけを使う、ということを決めた。一般的にレモンは通常収穫されてから48~72時間で搾汁される。しかし「アサヒもぎたて」は「24時間」にこだわり、鮮度の追求を表現することにした。
製造工程での技術革新にも取り組み、通常より低温で殺菌することで中身の香味劣化を抑制するという新技術を編み出した。劣化の抑止効果を持つ天然素材を活用し、香りの劣化を防ぐ「香味劣化抑制技術」も確立。特許出願中のそれぞれの技術を組み合わせて「アサヒフレッシュキープ製法」と名付けた。こうして他社に真似できないイノベーションを起こしていった。
「その結果、一般市販品と比べて香り成分は10倍残り、劣化臭の方は半分に抑えこむことが可能になりました」
味の設計にも工夫を凝らす。飲んだ瞬間、果実感をしっかり際立たせた。しかも9%という高いアルコール度数でもアルコール臭が目立たないよう、後味にも果実の香りを立たせる設計を心がけた。