飲料各社が次々と商品を開発し、激しい商戦が繰り広げられている缶チューハイ業界で旋風を巻き起こしているのが、アサヒビールの「アサヒもぎたて」だ。作家の山下柚実氏が開発現場をリポートする。
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本格的な暑さを迎える直前のこの時期、デッドヒートしている市場がある。缶チューハイ市場は前年と比べ7%増の1億4920万箱を売り上げる見通しだ(日本経済新聞2016年5月19日)。
缶チューハイや缶カクテルなどのアルコール飲料はRTD(Ready To Drink)と呼ばれ、ビール類が縮小する状況下でなんと7年間連続拡大を続けてきている。新商品を出してもなかなかヒットに結びつかない中、数少ない成長分野として熱い視線が注がれているのだ。
4月5日、その注目市場に大型商品が登場した。アサヒビールが缶チューハイで「第二のスーパードライ」を目指すとして投入した、新商品「アサヒもぎたて」。発売1か月で124万箱と同社のRTD分野で「過去最大売上」を達成し、好調な出足を受け年間生産計画も2割増の600万箱へ引き上げられた。
類似商品ひしめく激しい競争市場の中、「アサヒもぎたて」のいったい何が、消費者の心に刺さったのだろうか?
「ビッグブランドを打ちたてたい、そんな一心で開発に携わってきました」と企画・開発に携わったアサヒビールマーケティング第二部の宮广(みやま)朋美さん(33)は口を開いた。
「会社もRTDの商品開発にこれまでにない大規模な投資を決断してくれて、じっくり3年という時間をかけました」
同社はビール類ではトップの占有率を誇る。しかし、チューハイは業界4位と、後塵を拝してきた。トップはキリン「氷結」の固定席。「この市場に定着するビッグブランドを持つこと」が、アサヒビールの切実な願いだったのだ。
「そのためには、本当にお客様に求められ、かつインパクトのある新しい切り口を探し出さなければなりません。アサヒスーパードライの『辛口』といったコンセプトに並ぶような」
では、いったいどんな開発手法をとったのか。