コラム

下流老人への転落を防ぐための「“聖域”なき家計の構造改革」

聖域なき家計の構造改革

 昨今、金融資産をほとんど持たない「下流老人」が急増しており、年金生活をする高齢者世帯の7割が老後破産リスクを抱えているというデータもある。いったい、どうすれば下流老人への転落を避けることができるのだろうか。現役時代からできる対処法について、「家計の見直し相談センター」の藤川太氏が解説する。

 * * *
「下流老人」への転落の契機はそこかしこに潜んでいます。リストラなど自身の仕事を取り巻く環境の悪化もあれば、病気や介護といった自身や家族の健康問題による収入減も考えられます。そもそも収入が低い場合もあるでしょう。

 また老後は「イベント破産」にも注意が必要です。まとまった退職金を手にすることで気が大きくなり、現役時代には叶わなかった贅沢な海外旅行や高級車にお金を回したり、子どもに多額の資金援助をしたりすれば、見る見るうちに底を突きます。

 では、どうすればいいのか。下流転落を防ぐ手立ては定年後では間に合いません。現役時代から家計を見直す必要があります。それも食費や小遣いを減らすといった小手先の見直しでは追いつかなくなっているのが現状です。月々支払う住宅費や保険料などの固定費を抜本的に見直す「“聖域”なき家計の構造改革」を実践することが求められているのです。

 具体的に見ていきましょう。まず生涯で最も高い買い物といわれる「住宅ローン」を見直す。幸い日銀がマイナス金利を導入したことで、住宅ローンの金利は固定金利型で1%を切るなどかつてない水準まで下がっており、借り換えに最適な時期となっています。

 借り換えには諸費用がかかるので、自分が組んでいるローンの金利と現在の金利を比べて、少なくとも0.3%以上の差がある場合は、ぜひ検討してみてください。現在借りている金融機関に金利の引き下げ交渉をしてもいいでしょう。

 次に「保険」です。これは結婚や出産、マイホーム購入といったライフステージとともに変化する必要最低限の保障額を見極めます。子どもが成長すれば養育費の分は減らせますし、必要保障額を生涯一定にする必要はありません。

 いわば一定の「四角」から老後に向けて徐々に必要保障額を減らす「三角」になるようなイメージに見直せば、保険料をこれまでの半分以下に抑えることも可能です。「自動車」も鍵を握ります。より燃費のいいものに買い換えるなどダウンサイジングはもちろん、使用頻度によっては思い切って手放すことも視野に入れる必要があるでしょう。

 意外に家計を圧迫しているのが「通信費」です。スマートフォンの普及で大手携帯電話会社の料金プランはほぼ横並びとなっていますが、たとえば通話はガラケー(従来型の携帯電話)にして、データのやりとりは「格安SIM(電話番号や契約情報を書き込んだICカード)」のスマホという具合に2台持ちにするなど、工夫次第で節約が可能です。

 そして、なかなか手をつけにくい「教育費」ですが、これももはや“聖域”ではありません。子どもをムダな塾に通わせたり、中学から大学まですべて私立に行かせたりすることが本当に必要か。子どもの将来を考えて、どういう経路が最適なのかを考え直したいところです。

※マネーポスト2016年夏号

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