ライフ

高田明氏 「世話好きの母から商売人の感覚を受け継いだ」

ジャパネットたかた創業者・高田明氏と母・和さん

 男にとって生まれて最初に接する異性である母の愛のありがたみは、遠く離れてみて初めて気づくことがほとんどだろう。現在92歳となった母の思い出を、ジャパネットたかた創業者の高田明氏(67)が語る。

 * * *
 父のカメラ好きが高じて夫婦で写真屋を開き、それがカメラ店「カメラのたかた」となって、僕らきょうだいも入ったわけですが、商売を支えていたのは母の存在。おふくろの実家は平戸で古くから商家をしていて、根っから商売人の感覚を持っているんです。

 店では近所のお年寄りが来たら、さっと椅子を出して何も買わなくてもにこにこ世間話をする。おふくろのそういう姿をみてきたから、挨拶やお年寄りを敬う心は自然と身についた。僕はやりすぎるくらい社員に声をかけますが、それも母譲りなのでしょうね。

 父は地域で写真クラブを作って仲間が大勢集まりましたが、その時もお茶を出したり、下げたり、声をかけたりと、八方きめ細やかに目を配ってね。多趣味な父でしたけれど、“三丁目の夕日”のように仲間を助けてきたのは母。

 僕の友達もよく泊まりにきていたのですが、おふくろが世話好きでしょう。高校や大学の友達が67になった今でもみんな、「おふくろさんに会いたい」と言って、電話をかけてきてくれますよ。

 おふくろらしいのは、高倉健さんとのエピソードです。映画『あなたへ』の舞台が平戸だったので、会いたいと言って娘夫婦と撮影現場へ出かけてね。

 もちろん簡単に会えるわけはないのですが、たまたま健さんが近くへ歩いてきたらしいんです。おふくろは駆け寄ると10分も15分も立ち話をして、しまいには健さんと肩を組んで写真まで撮っちゃった(笑い)。

「高倉健さんが車まで送ってくれて、握手したとよ!」

 と、それはもう喜んで。写真は額に入れて飾ってありますが、90のばぁちゃんの勇気やポジティブな姿勢でこんなに素敵な写真が撮れたんだなって。

 おふくろは好奇心旺盛で、色々なことに関心がある。スポーツも大好きで、錦織圭選手のテニスの中継を見て、「すごいね!」と夜中に電話がかかってくることもあるんです。

 まだまだ長生きをしてもらって、一緒に東京五輪を見たいですね。

●たかた・あきら/長崎県生まれ。1986年に父親のカメラ店から独立し、1999年に社名を『ジャパネットたかた』へ変更。通販業界で活躍するも2015年1月に社長を退任し、現在は講演やメディア出演などを中心に活動する。

※週刊ポスト2016年7月22・29日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

田久保市長の”卒業勘違い発言”を覆した「記録」についての証言が得られた(右:本人SNSより)
【新証言】学歴詐称疑惑の田久保市長、大学取得単位は「卒業要件の半分以下」だった 百条委関係者も「“勘違い”できるような数字ではない」と複数証言
NEWSポストセブン
本拠地で大活躍を見せた大谷翔平と、妻の真美子さん
《真美子さんと娘が待つスイートルームに直行》大谷翔平が試合後に見せた満面の笑み、アップ中も「スタンドに笑顔で手を振って…」本拠地で見られる“家族の絆”
NEWSポストセブン
“高市効果”で自民党の政党支持率は前月比10ポイント以上も急上昇した…(時事通信フォト)
世論の現状認識と乖離する大メディアの“高市ぎらい” 参政党躍進時を彷彿とさせる“叩けば叩くほど高市支持が強まる”現象、「批判もカラ回りしている」との指摘
週刊ポスト
国民民主党の玉木雄一郎代表、不倫密会が報じられた元グラビアアイドル(時事通信フォト・Instagramより)
《私生活の面は大丈夫なのか》玉木雄一郎氏、不倫密会の元グラビアアイドルがひっそりと活動再開 地元香川では“彼女がまた動き出した”と話題に
女性セブン
バラエティ番組「ぽかぽか」に出演した益若つばさ(写真は2013年)
「こんな顔だった?」益若つばさ(40)が“人生最大のイメチェン”でネット騒然…元夫・梅しゃんが明かしていた息子との絶妙な距離感
NEWSポストセブン
前伊藤市議が語る”最悪の結末”とは──
《伊東市長・学歴詐称問題》「登場人物がズレている」市議選立候補者が明かした伊東市情勢と“最悪シナリオ”「伊東市が迷宮入りする可能性も」
NEWSポストセブン
日本維新の会・西田薫衆院議員に持ち上がった収支報告書「虚偽記載」疑惑(時事通信フォト)
《追及スクープ》日本維新の会・西田薫衆院議員の収支報告書「虚偽記載」疑惑で“隠蔽工作”の新証言 支援者のもとに現金入りの封筒を持って現われ「持っておいてください」
週刊ポスト
ヴィクトリア皇太子と夫のダニエル王子を招かれた天皇皇后両陛下(2025年10月14日、時事通信フォト)
「同じシルバーのお召し物が素敵」皇后雅子さま、夕食会ファッションは“クール”で洗練されたセットアップコーデ
NEWSポストセブン
高校時代の青木被告(集合写真)
【長野立てこもり殺人事件判決】「絞首刑になるのは長く辛く苦しいので、そういう死に方は嫌だ」死刑を言い渡された犯人が逮捕前に語っていた極刑への思い
NEWSポストセブン
問題は小川晶・市長に政治家としての資質が問われていること(時事通信フォト)
「ズバリ、彼女の魅力は顔だよ」前橋市・小川晶市長、“ラブホ通い”発覚後も熱烈支援者からは擁護の声、支援団体幹部「彼女を信じているよ」
週刊ポスト
米倉涼子を追い詰めたのはだれか(時事通信フォト)
《米倉涼子マトリガサ入れ報道の深層》ダンサー恋人だけではない「モラハラ疑惑」「覚醒剤で逮捕」「隠し子」…男性のトラブルに巻き込まれるパターンが多いその人生
週刊ポスト
ソフトバンクの佐藤直樹(時事通信フォト)
【独自】ソフトバンクドラ1佐藤直樹が婚約者への顔面殴打で警察沙汰 女性は「殺されるかと思った」リーグ優勝に貢献した“鷹のスピードスター”が男女トラブル 双方被害届の泥沼
NEWSポストセブン