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時に面倒もある日本の「ハンコ文化」はなぜなくならない?

日本の「ハンコ文化」はなぜなくならないのか?

 役所に書類を出す時も、車や家を買う時も、遺産相続の手続きにも必要な「ハンコ」──。電子取引・電子申請が普及しても、なぜかなくならない。それどころか、直筆サインよりも、目の前にいる本人よりも、「ハンコ」が信用されることさえある。銀行などでは「これは登録されたハンコとは違います」と書類を突き返されることもある。

 全日本印章業協会の中島正一・会長は、ハンコ文化は日本人の暮らしに深く根付いたものだと説明する。

「10年ほど前までは中国や韓国、台湾にも印鑑登録制度がありましたが、今も続くのは世界で日本だけ。日本人は一生のうち、平均5本のハンコを持つといわれています。結婚して夫婦で新しい人生を始める時に実印、銀行印、認印の3点セットを贈る風習もありました。車の車庫証明、マイホームの登記などはもちろん、親御さんが亡くなった時の遺産相続では『遺産分割協議書』に各相続人の実印が必要になる」

 ただ、ハンコ業界の先行きは決して明るくないという。中島会長が続ける。

「当協会に所属する会員は1200ほど。30年前は約4500でしたから減少の一途にあります。ゴム印の需要減に加えて、国際的な逆風もあります。最も優れた手彫り印鑑の材料だった象牙が1989年のワシントン条約で輸入禁止となった。

 輸入再開に向けた取り組みを続けていますが、自然保護団体に『密猟で象が殺され、その象牙が売買されている』というネガティブキャンペーンをネット上で展開されたりして、うまくいかない。捕鯨と同じような構図です」

 加えて、銀行や役所などでの“脱ハンコ”の流れもある。中島会長はこういう。

「そうした動きはもちろん把握しているが、ハンコをなくすと不便があるのも事実です。平日の日中、銀行の窓口に行けないサラリーマンが妻に代わりに行ってもらう時、静脈認証ではどうしようもない。

 会社印にしても、社長の静脈を登録して手続きのたびに社長が銀行や役所に出向くのは現実的でない。ハンコにはハンコの利便性があるんです」

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