国際情報

米軍が撤退したフィリピン 本当に自主防衛できているのか?

米軍の原子力潜水艦到着を歓迎するセレモニー(2016年1月) AP/AFLO

 フィリピンでは1992年までに米軍基地が完全撤退した。しかし、中国との領有権問題やローカル経済の低迷などから米軍駐留時代を懐かしむ声も聞こえる。在フィリピン12年のノンフィクションライター・水谷竹秀氏が現地ルポをお届けする。

 * * *
 クラーク基地跡は米軍撤退後、民間転用され、国際空港やゴルフ場、ホテル、カジノ、動物園などのレジャー施設が充実し、国内外から企業が進出する経済特区へ様変わりした。一部は比空軍基地としても使用されている。基地跡周辺の住民たちは、現在のこの姿こそが撤退の「成功」を物語っているかのように口を揃える。

 しかし、あれから四半世紀近くが経過した今も尚、国内のそこかしこには米軍の影がちらついている。撤退とは名ばかりで、有名無実化されているのがその実態ではないのか。国防に関しても、自主防衛にはほど遠い状況だろう。

 私が基地跡を訪れた6月上旬、スービック湾の周辺海域では比米合同軍事演習が5日間行われ、双方合わせて約1400人が参加した。演習の表向きの理由は「両国関係の強化」だが、この背景には、南シナ海南沙諸島の領有権をめぐって実効支配を強める中国をけん制する狙いがあった。

 フィリピンでは1999年に訪問米軍地位協定(VFA)が批准されたのを契機に、両軍による軍事演習が毎年、実施されてきた。物理的に基地がなくなったとはいえ、米軍は未だに比国内で駐留を繰り返しているのが現状で、南部のミンダナオ地方ではイスラム武装勢力に対する比国軍の作戦に米兵が参加していたとする証言まである。

 反体制派の一人は私の取材に対し、「撤退前から状況は何も変わっていない」と言い切る。

関連キーワード

関連記事

トピックス

どんな役柄でも見事に演じきることで定評がある芳根京子(2020年、映画『記憶屋』のイベント)
《ヘソ出し白Tで颯爽と》女優・芳根京子、乃木坂46のライブをお忍び鑑賞 ファンを虜にした「ライブ中の一幕」
NEWSポストセブン
相川七瀬と次男の凛生君
《芸能界めざす息子への思い》「努力しないなら応援しない」離婚告白の相川七瀬がジュノンボーイ挑戦の次男に明かした「仕事がなかった」冬の時代
NEWSポストセブン
俳優の松田翔太、妻でモデルの秋元梢(右/時事通信フォト)
《松田龍平、翔太兄弟夫婦がタイでバカンス目撃撮》秋元梢が甥っ子を優しく見守り…ファミリーが交流した「初のフォーショット」
NEWSポストセブン
世界が驚嘆した大番狂わせ(写真/AFLO)
ラグビー日本代表「ブライトンの奇跡」から10年 名将エディー・ジョーンズが語る世界を驚かせた偉業と現状「リーチマイケルたちが取り戻した“日本の誇り”を引き継いでいく」
週刊ポスト
佳子さまを撮影した動画がXで話題になっている(時事通信フォト)
《即完売》佳子さま、着用した2750円イヤリングのメーカーが当日の「トータルコーディネート」に感激
NEWSポストセブン
国連大学50周年記念式典に出席された天皇皇后両陛下(2025年9月18日、撮影/JMPA)
《国連大学50周年記念式典》皇后雅子さまが見せられたマスタードイエローの“サステナブルファッション” 沖縄ご訪問や園遊会でお召しの一着をお選びに 
NEWSポストセブン
豪雨被害のため、M-1出場を断念した森智広市長 (左/時事通信フォト、右/読者提供)
《森智広市長 M-1出場断念の舞台裏》「商店街の道の下から水がゴボゴボと…」三重・四日市を襲った記録的豪雨で地下駐車場が水没、高級車ふくむ274台が被害
NEWSポストセブン
「決意のSNS投稿」をした滝川クリステル(時事通信フォト)
滝川クリステル「決意のSNS投稿」に見る“ファーストレディ”への準備 小泉進次郎氏の「誹謗中傷について規制を強化する考え」を後押しする覚悟か
週刊ポスト
アニメではカバオくんなど複数のキャラクターの声を担当する山寺宏一(写真提供/NHK)
【『あんぱん』最終回へ】「声優生活40年のご褒美」山寺宏一が“やなせ先生の恩師役”を演じて感じた、ジャムおじさんとして「新しい顔だよ」と言える喜び
週刊ポスト
林家ペーさんと林家パー子さんの自宅で火災が起きていることがわかった
《部屋はエアコンなしで扇風機が5台》「仏壇のろうそくに火をつけようとして燃え広がった」林家ぺー&パー子夫妻が火災が起きた自宅で“質素な暮らし”
NEWSポストセブン
1年ほど前に、会社役員を務める元夫と離婚していたことを明かした
《ロックシンガー・相川七瀬 年上夫との離婚明かす》個人事務所役員の年上夫との別居生活1年「家族でいるために」昨夏に自ら離婚届を提出
NEWSポストセブン
“高市潰し”を狙っているように思える動きも(時事通信フォト)
《前代未聞の自民党総裁選》公明党や野党も“露骨な介入”「高市早苗総裁では連立は組めない」と“拒否権”をちらつかせる異例の事態に
週刊ポスト