半藤:むしろ借金の肩代わりをさせられて、逃げ出したいのはドイツだ(笑い)。
出口:ですから、英国のEU離脱はそれほど大きな問題ではないと思っています。それより将来に不安を感じるのは、軍事クーデターが起きたトルコですね。イスラム教でありながら民主主義国家のトルコはいわば、“中東のヘソ”で、ここが不安定になると地域全体が怪しくなります。シリア難民もトルコを経由して欧州に行くわけです。
半藤:軍部によるクーデターということでかつての二・二六事件を連想する人もいますが、イスラム教国でありながら世俗主義(政治と宗教の分離原則)を取るトルコには、日本における天皇のような存在がいないんですね。二・二六事件は、天皇という「玉の取り合い」だったわけで、そこがただのクーデターとは違う。
私もそうですが、日本人にとってトルコはなかなか理解が及ばない。しかし、あのローマ帝国の首都はコンスタンティノープル(イスタンブル)ですからね。
出口:トルコや中東がずっと世界の中心だったのです。日本人はそうした歴史を学ぶ機会がなかったんですね。
●でぐち・はるあき/1948年、三重県生まれ。京都大学法学部を卒業後、日本生命に入社。現在はライフネット生命保険代表取締役会長兼CEO。著書は『「全世界史」講義』I、II『生命保険入門 新版』『直球勝負の会社』など多数。
●はんどう・かずとし/1930年、東京都生まれ。東京大学文学部卒業。文藝春秋に入社し、「週刊文春」「文藝春秋」編集長、専務取締役などを経て作家に。著書に『日本のいちばん長い日』『ノモンハンの夏』『昭和史』『日露戦争史』シリーズなど多数。
※週刊ポスト2016年8月12日号