飛鳥新社に移籍したHanadaはDTP(*)から何から何まで、すべてが旧WiLLを踏襲したものになっている。事実上の創刊号であるHanada6月号では、連載陣も引き継がれて回数も旧WiLLからの通し番号。
【*コンピュータ上で行う文章の割り付けや誌面レイアウトなどの編集作業】
分裂騒動についての言及は、わずかに誌面対談の中で暗ににおわす程度で、さらりと通常運転で花田節は変わらず。敏腕として鳴らした花田氏の嗅覚は鋭い。
花田時代のWiLLは、朝日新聞による誤報(吉田清治の慰安婦証言、福島原発の吉田所長に関する報道)を社自らが認めると、反朝日大キャンペーンを張る。反朝日が色褪せると、今度は反民主党、反共産党特集と機を見るに敏な機動性。爆笑問題やAV監督の村西とおる氏の連載もあり、論壇誌であっても単調とならず、飽きさせない創意工夫が読者を惹きつけてきた。
往年女優を使った巻頭モノクログラビアも、若い読者には新鮮な輝きを放つ。
一方、新体制で継続するWiLLは、それに対しカラーグラビアが格段に充実、巻頭からしてかなりの部分が刷新され、ビジュアルが飛躍的に重視されている。
最新号の8月号では、アルピニストの野口健氏によるヒマラヤの雄大な自然と人々の暮らしが精緻に掲載されている。この判型の論壇誌では破格のクオリティだ。一言でいえば格調が高くなった。
書評欄・映画評も大きく増頁され、カルチャー重視を鮮明にする一方、既存の時事問題に切り込む従来のスタイルは堅持している。総合的に見て、一歩も二歩も垢抜けたな、という印象。
Hanadaがインプレッサ、スカイラインの派手目なスポーツカーなら、WiLLはクラウン、セルシオの高級セダン。そんな感触を受ける。
※SAPIO2016年9月号