野菜や魚には季節がある。出荷が始まる「走り」、食べ頃の「旬」「盛り」、終盤の「名残り」…。栄養価は最大、価格は最低となる、旬から名残りにかけての“最旬”食材を楽しむコツを、松田美智子さんが紹介します。
トマトは、昔は“赤なす”と呼ばれたなすの親戚。南米のアンデス山脈高原地帯原産のナス科ナス属の植物で、その実を食す緑黄色野菜の一種。17世紀に日本へ伝来したと考えられ、食用になったのは明治以降のこと。『西洋料理通』(1872年)に「蒸し赤なす製法」として食べ方が紹介されている。
美肌や風邪予防に有効なビタミンCや老化を抑制するビタミンE、カリウム、食物繊維などの栄養素を豊富に含む。とくに注目されているのが、リコピンと呼ばれるカロテノイドの一種やβ-カロテン。トマトの赤い色はリコピンの赤である。老化やがんを予防する抗酸化作用に優れ、その中でもリコピンの抗酸化作用はずば抜けており、β-カロテンの2倍、ビタミンEの100倍ともいわれる。生のトマトよりも加工品のほうが2~3倍もリコピンを吸収しやすく、リコピンは比較的熱に強いため、油を使った料理でも吸収性が高まる。
全世界のトマトの年間生産量は1億6000万t超! 世界では8000を超える品種があるといわれ、日本でも120種以上が品種登録されている。生産量は中国が第1位だが、消費量は地中海諸国がダントツの1位。
購入の際は、ツンツン頭、くっきりヒップラインが買いだ。ヘタやガクが濃い緑色で枯れておらず、触るとチクッとするほど元気なものが◎。また、皮に張りがあり、手に持つとずっしりと重たいものを選ぶ。お尻部分の放射状の線がはっきりと出ているトマトは鮮度がよく味もよい。
下ごしらえは、種は必ず取り除く。皮は包丁むきでOK。一般のトマトは、ヘタと芯、皮、種を取り除く。まず、お尻に切り口を入れて下から上へ薄く包丁で皮をむき、次にヘタの周りに包丁の刃先を2cmぐらい差し込み、くるりと回しながら芯を抜く。横に2等分して種をスプーンですくい出す。種はにんにくしょうゆと合わせて、そのままご飯にかけても美味。ぶっかけそうめんにも。
カレーの副菜に最高! おやつがわりにもなる『甘いトマトのサラダ』のレシピをご紹介しよう。
【作り方】
(1)レモン汁大さじ4、オリーブ油1/4カップ、はちみつ1/3カップ、塩小さじ1/2、白こしょう少量を合わせておく。
(2)下ごしらえしたトマト大2個は1.5cm幅の輪切りにし、保存容器に(1)と合わせて冷蔵庫で3時間ほどマリネする。器に盛り、セルフィーユ、またはパセリのみじん切りをあしらう。
はちみつをケチらないのがおいしくマリネするコツ。
「『甘いトマトのサラダ』は、私が師事したホルトハウス房子先生のレシピを私なりにアレンジしたものです。とても簡単なのに、キンと冷えた甘いトマトはまさに“果菜”ならではのごちそう。大ぶりの元気なトマトがたくさん手に入ったら、まとめてマリネしておいてもいいですね」(松田さん)
撮影■鍋島徳恭
※女性セブン2016年8月18・25日号