いま、外食業界がもっとも頭を抱えている問題──それは、いくら店が繁盛していても、従業員やアルバイトがまったく集まらないという深刻な人材難だ。ある大手居酒屋チェーンの幹部が嘆く。
「新卒・中途採用の募集は随時行っているのですが、応募者は5年前に比べると5分の1ほど。アルバイトも学生や主婦の応募はあるものの、1週間のうちに働ける曜日や時間が少ないうえ、すぐに辞めてしまう人が多い。駅に近い店舗でも満足にシフトが組めない状況が、もう何年も続いています」
勤怠管理がしっかりしていそうな大手チェーンをもってしてもこの惨状。中小チェーンや個人店は推して知るべしだ。千葉県内で数店舗のラーメン店を経営するオーナーがいう。
「飲食業界は3K仕事でブラック企業が多いイメージがついてしまっているので、応募してくるのは外国人留学生ばかり。でも、日本に来たばかりで言葉もろくに喋れない留学生を雇っても、余計に足手まといになってしまうのが本音です。
店は売り上げも順調に伸びているので出店をさらに増やす計画でしたが、しばらく取りやめて採用に専念せざるを得ない状況です」
9月1日まで東京ビッグサイトにて開かれた外食産業の商談見本市「外食ビジネスウィーク2016」。居酒屋・ラーメン・そば・うどん・カフェなど専門性の高い約500社が新しい食材や機器を外食店に熱心に売り込む一方、今年から新たに登場したのが、人材不足対応の商材やサービスを提案する企業パビリオンだ。
リクルートジョブズでは、短時間しか働けない従業員も増えて作成しづらくなったチェーン店などのシフトをオンライン上で管理するシステム「シフオプ」を販売している。
「これまでタイムカードを使って店長の裁量や従業員との信頼関係などでシフトを決めていた店も、可視化することによって、欠員の状況を一目で把握できますし、自動メールで近隣の店舗から空いた人材のヘルプ要請をすることもできます」(リクルートジョブズ商品本部担当者)
すでに店で働いている従業員ではなく、緊急に短期・単発のヘルプを求める飲食店向けに求人広告サービスを提供しているのは、おてつだいネットワークス。携帯電話やスマホのGPS(位置情報)を利用して、「近くにいて働ける」というワーカーのみに募集メールを配信する仕組みだ。
「忙しい時間帯にどうしてもシフトを埋めたい外食チェーンや、近隣で行われる祭りや花火大会でイレギュラーに従業員を増員したいコンビニなどにご活用いただいています。登録ワーカー数は20代を中心に40万人を超えています」(サービス担当者)