緑はきゃべつ、赤はりんご、黄色はとうもろこしなど、野菜や果物の名前のついたクレヨンが話題になっている。その名も『おやさいクレヨン』。
2014年3月の発売以来、累計6万セットを超えるこの大ヒット商品を開発したのは、青森市にあるデザイン会社「mizuiro」だ。
大雪が降り辺り一面が真っ白になってしまったある日、代表を務める木村尚子さんが、「生の色が見たい。植物や野菜で絵を描いたらどうなるんだろう」と思ったことがきっかけで誕生したという。
そして彼女は、当時の様子を次のように振り返る。
「クレヨンの主成分はろうで、キャンドル作りに似ている。手作りキャンドルがあるのだから、クレヨンも作れるかもしれないと思い、にんじんやほうれん草などの野菜パウダーで試作を始めました。ワックスと野菜粉末を混ぜて、何とか形は作れても、描き心地はボソボソとして硬く、カスが紙の上に残ってしまう。なかなか野菜の色を楽しめるまでにはなりませんでしたね」
糖分の多い野菜や果物を粉末にするため機械にかけると固着してしまう。最適な野菜や果物を選定し、細かいメッシュを通すなど微粉化へ向けて改良を重ね、クレヨン用の超微粒子パウダー化に成功した。
創業60年になる名古屋のクレヨン工場の職人が加工作業を担当。ベースになるのは、米ぬかから採れる米油やライスワックスだ。これらを蒸気熱釜で溶かし、野菜パウダーに顔料(食品の着色に使われるタイプ)を少し加えてよく混ぜる。次に、手動成型器に流し込み、ゆっくりと冷却しながら固める。
スーパーなどでキャベツの外葉や規格外品などの野菜が大量に廃棄されていることを知り、それらが原料費削減やリサイクルにもなることから使用を決定。構想から約8か月で「おやさいクレヨンvegetabo」が誕生した。今年の6月に発表した定番色「スタンダード」は、幼稚園や保育園で採用されるなど、日本中で使われている。
※女性セブン2016年9月22日号