コラム

リートファンドへの資金偏重が継続 懸念すべき点は?

リートファンドへの資金偏重に懸念も

 投資信託市場ではリート(不動産投資信託)を投資対象とするファンドへの資金流入が続いているが、そうした資金偏重に落とし穴はないのか。楽天証券経済研究所ファンドアナリストの篠田尚子氏が解説する。

 * * *
 7月の国内投資信託市場への資金流入額は529億円と、2か月連続で前月を下回り、また1年8か月ぶりに1000億円の大台割れとなった。6月23日に英国のEU(欧州連合)からの離脱が決定し(ブリグジット)、7月前半まで日本の株式市場が円高によって低迷したことが影響した格好だ。

 その後はNYダウの最高値更新など、8月にかけての内外株式市場の上昇によって純資産残高は増加し、7月末時点で59兆5383億円と、再び60兆円が目前となっている。総じて、投資信託マーケットはまずまずの好調といえるだろう。

 ただし、問題点がないわけではない。リート(不動産投資信託)を投資対象とするファンドへの偏重が続いている。

 現在、純資産残高によるランキングをみると、ベストテンには海外リートに投資するファンドが6本も入っている。特に、ベストスリーは、『新光 US-REIT オープン』『フィデリティ・USリート・ファンドB(為替ヘッジなし)』『ラサール・グローバルREITファンド(毎月分配型)』と、すべて海外リートで、いずれも純資産残高は1兆円を突破している。

 また、リートファンドの純資産残高は10兆円を超えており、ファンド全体の2割に達しようとしている。2011年から2012年にかけて爆発的に売れた「通貨選択型ファンド」のような状況に近くなっているといえよう。

 こうした日本の個人投資家のリートへの偏重については、海外の金融市場関係者とのミーティングで話題となることも多く、関心が高まっている。もともと、リートは複雑な仕組みの金融商品といえ、理解するためにはある程度の知識が必要とされる。しかも、海外リートとなれば馴染みが薄く、個人投資家に幅広く売れるファンドとしては違和感が強い。この点も通貨選択型ファンドと重なるところだ。

 海外リートを投資対象とするファンドは、分配金が毎月支払われる毎月分配型がほとんど。個人投資家の分配金へのニーズが強いことが、販売が好調である最大の要因となっている。

 しかし、中には、高水準の分配金を維持するために、運用によって得られた収益から支払われる「普通分配金」に加えて、投資元本を原資とする「特別分配金」を支払っているファンドも散見される。

 特別分配金はつねに悪者というわけではない。例えば、何年も前から保有している投資家と、決算日の数日前に購入した投資家が、それぞれ受け取る分配金を同じにするためには必要な仕組みである。しかし、前述のように、分配金を維持するために支払うのであれば問題となってくる。

 今後、さらに円高が進行する、あるいは、円高が定着するだけでも、分配金の減配や基準価額の下落は避けられない。純資産残高が大きいだけに、資金が短期間で急激に流出するような事態になれば、基準価額の急落や、投資先の海外リート市場にも悪影響が出る可能性がある。保有しているファンドにリートが多いという人は、見直しを検討すべきだろう。

※マネーポスト2016年秋号

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