国内

70年前の「復興する東京」 未公開写真750点の衝撃

焼け跡で遊ぶ女の子たち(1946年2月撮影)

 空襲で焼け野原となった首都・東京。玉音放送が流れた1945年8月15日正午、炎天下の中で見上げると抜けるような青空が広がっていた。満足な食糧や衣服も手に入らず、途方に暮れる人々。だが、『東京復興写真集1945~46』(勉誠出版刊)には、復興に向けて歩み始めた日本人の姿が鮮やかに浮かび上がる。

「収録した840点はすべて日本人が撮影した写真で、約750点は未公開です。終戦後の約1年間、日本人は想像を絶する厳しい生活を強いられましたが、一方で地域の実力者など経済的に恵まれた人たちもいた。この写真は、破壊された街並みの中で復興を始めた東京の偽らざる姿なのです」(共同編者の東京大空襲・戦災資料センター主任研究員・山辺昌彦氏)

 我々が普段目にする終戦直後の風景は、GHQ(連合国軍総司令部)にとって都合のいい写真、すなわち、占領政策が成功裏に遂行されていることを示すために「従順な日本人」を写したものばかりだった。しかし、日本人の目から見た当時の東京は違っていた。

「撮影したのは、写真家・木村伊兵衛やグラフィックデザイナー・原弘(はらひろむ)が所属し、戦時期に陸軍参謀本部の下で対外向けの写真宣伝物を制作していた出版社兼写真工房である東方社でした。東方社は東京大空襲で解散を余儀なくされましたが、終戦直後に設立された文化社が後を引き継ぎました。

 その文化社も経営に行き詰まり、わずか2年で解散、“幻の出版社”と呼ばれています。しかし、社屋には1万8000点もの写真ネガが残され、5年前に東京大空襲・戦災資料センターに寄贈されました」(山辺氏)

 同センターは受け取った写真を研究・分析し、東方社のカメラマンだった林重男氏と菊池俊吉氏らの写真も加え、終戦直後の東京の復興と暮らしに絞って写真集にまとめた。そこには、祭りや社会事業施設の内部など、GHQが見向きもしなかった日本人の日常生活が活写されていた。

 空襲で焼け跡と化した東京の街には、戦後間もなく露店が軒を連ねた。銀座から京橋、日本橋、さらには神田、上野、浅草、ターミナル駅だった新宿、渋谷の風景や、そこを歩く人々の表情や服装の華やかさは、復興のスピードが想像以上に早かったことを伝えている。

 繁華街では、地元有力者が中心となって復興祭が行なわれた。どの地区も空襲で大きな被害を受けていたが、潜在的な経済力を持っていたのだ。復興祭は、そんな地区の人々が自らの力で復興を遂げる覚悟と意気込みを示すものだった。街頭では、天然痘の流行に対応して主要駅の駅前などで予防接種の種痘を受ける場が設けられた。また、ツベルクリン反応検査やレントゲン撮影など、結核予防への対策も講じられていた。

関連キーワード

トピックス

本格的に中国進出をめざすならば…(時事通信フォト)
《年内結婚報道》橋本環奈と中川大志の「結婚生活」に立ちはだかる“1万kmの距離” 2人の異なる“海外進出の希望先”
週刊ポスト
「池田温泉旅館 たち川」の部屋風呂に「温泉偽装疑惑」。左はHPより(現在は削除済み)、右は従業員提供
「水道水にカップ5杯の重曹を入れてグルグル…」岐阜県・池田温泉「高級旅館」の部屋風呂に“温泉偽装”疑惑 ヌルヌルと評判のお湯の真実は…“夜逃げ”オーナーは直撃に「誰からのリークなの? それ」
NEWSポストセブン
これまでジャズ歌手などとしても活動してきた参政党・さや氏(写真/共同通信社)
参政党・さや氏、歌手時代のトラブル証言 ジャズバーのママが「カチンときて縁を切っちゃいました」、さや氏は「そうした事実はない」…真っ向食い違う言い分
週刊ポスト
もうすぐ双子のママになる。Numero.jpより。
Photos:Mika Ninagawa
中川翔子3年にわたる不妊治療と2度の流産を経験 。 双子の男の子のママになる妊婦姿を披露して話題に
NEWSポストセブン
錦織圭とユニクロの関係はどうなるか(写真/共同通信社)
「ご本人からの誠意ある謝罪があった」“ユニクロ不倫”錦織圭、ファーストリテイリング広報担当が明かしたスポンサー契約継続の理由
週刊ポスト
趣里と父親である水谷豊
《女優・趣里の現在》パートナー・三山凌輝のトラブルで「活動セーブ」も…突破口となる“初の父娘共演”映画は来年公開へ
NEWSポストセブン
岐阜の「池田温泉旅館 たち川」が突然の閉鎖、事業者が夜逃げした(左は旅館のInstagramより)
【スクープ】岐阜県の名所・池田温泉の人気旅館が突然の閉鎖 町が運営委託した事業者が“夜逃げ”していた! 町長からは228万円の督促状、従業員が告発する「オーナーの計画」 給料も未払いに
NEWSポストセブン
山尾志桜里氏は2017年にダブル不倫が報じられた(時事通信フォト)
参院選落選・山尾志桜里氏が明かした“国民民主党への本音”と“国政復帰への強い意欲”「組織としての統治不全は相当深刻だが…」「1人で判断せず、決断していきたい」
NEWSポストセブン
オンカジ問題に揺れるフジ(時事通信)。右は鈴木善貴容疑者のSNSより
止まらない「オンカジドミノ退社」フジテレビ社内で話題を呼ぶ
NEWSポストセブン
中村七之助の熱愛が発覚
《元人気芸妓とゴールイン》中村七之助、“結婚しない”宣言のルーツに「ケンカで肋骨にヒビ」「1日に何度もキス」全力で愛し合う両親の姿
NEWSポストセブン
詐称疑惑の渦中にある静岡県伊東市の田久保眞紀市長(HP/Xより)
《まさかの“続投”表明》田久保眞紀市長の実母が語った娘の“正義感”「中国人のペンションに単身乗り込んでいって…」
NEWSポストセブン
大谷が購入したハワイの別荘の広告が消えた(共同通信)
【スクープ】大谷翔平「25億円ハワイ別荘」HPから本人が消えた! 今年夏完成予定の工期は大幅な遅れ…今年1月には「真美子さん写真流出騒動」も
NEWSポストセブン