ビジネス

中間管理職は無用の長物、誰もが社内起業家になれと大前氏

ビジネスマンは「会社を変える」くらいの意識が必要(写真:アフロ)

 近著『「0から1」の発想術』で、全く新しいものを生み出す発想力の重要性を説いている大前研一氏。近年、イノベーションを起こしているのは新興企業が多いが、大前氏は従来型の企業にいるビジネスマンこそ「イントラプレナー」になるべきだと指摘する。

 * * *
 日本企業では、多くのビジネスマンが会社の「階層社会」のピラミッド組織の中で「ミドルマネジメント(中間管理職)」という立場に置かれている。だが、もはや階層社会もミドルマネジメントも無用の長物だ。

 かつて日本経済全体が右肩上がりで成長していた時代は、同じプラントや同じプロジェクトの規模を拡大していけばよかった。したがって、階層が上の年配者ほど経験が豊富になり、階層が下の若い人たちを指導する力があった。

 しかし、今や企業を取り巻く競争環境や顧客ニーズは激変した。新しい技術や新しいコンセプトが続々と登場し、これまでの「成功の方程式」が全く通用しなくなっている。

 しかも、ライバルは見えない状況だ。つまり、アマゾン、グーグル、フェイスブック、あるいはまだ見ぬ新興ベンチャーなど、従来のように「同業他社」ではない競争相手と戦わなければ、あらゆる業種が突然死する時代なのである。

 そういう時代には、会社の方針や事業計画に基づいて仕事をするだけのミドルマネジメントは役に立たない。今や真っ当な会社であれば、トップマネジメントの意思決定はメール一発ですべてのヒラ社員に届く。ヒラ社員が自分の意見をトップマネジメントに直接伝えることもできる。

 したがって、トップマネジメントとヒラ社員の間の単なるメッセンジャー(伝令)役でしかないミドルマネジメントは全く不要だし、ましてや階層社会の中で同期より1年早く出世したなどということは何の意味もない。トップマネジメントだろうが、ミドルマネジメントだろうが、新入社員だろうが、役割はみな同じであり、「自分が会社を変える」くらいのことをしなかったら、その会社と一緒に沈んでいくだけである。つまり、階層社会というのは、続々と新しい技術、新しい事業機会、新しい競争相手が出てきている今の時代には有害・無益なコンセプトなのだ。

 会社の5年後、10年後を見通して新たな基本戦略や自分たちの事業をつぶす可能性のある脅威への対抗策を考え出せる人間でなければ、会社の中に安穏と留まることができない時代になったわけで、その能力には年齢や階層はもとより性別も国籍も民族も宗教も関係ない。

 言い換えれば、今やビジネスマンは誰もが会社の中で新しい事業を立ち上げる「イントラプレナー(社内起業家)」にならねばならないのだ。

※SAPIO2016年10月号

関連キーワード

トピックス

水原一平氏はカモにされていたとも(写真/共同通信社)
《胴元にとってカモだった水原一平氏》違法賭博問題、大谷翔平への懸念は「偽証」の罪に問われるケース“最高で5年の連邦刑務所行き”
女性セブン
尊富士
新入幕優勝・尊富士の伊勢ヶ濱部屋に元横綱・白鵬が転籍 照ノ富士との因縁ほか複雑すぎる人間関係トラブルの懸念
週刊ポスト
3大会連続の五輪出場
【闘病を乗り越えてパリ五輪出場決定】池江璃花子、強くなるために決断した“母の支え”との別れ
女性セブン
《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
女性セブン
水原一平氏と大谷翔平(時事通信フォト)
「学歴詐称」疑惑、「怪しげな副業」情報も浮上…違法賭博の水原一平氏“ウソと流浪の経歴” 現在は「妻と一緒に姿を消した」
女性セブン
『志村けんのだいじょうぶだぁ』に出演していた松本典子(左・オフィシャルHPより)、志村けん(右・時事通信フォト)
《松本典子が芸能界復帰》志村けんさんへの感謝と後悔を語る “変顔コント”でファン離れも「あのとき断っていたらアイドルも続いていなかった」
NEWSポストセブン
大阪桐蔭野球部・西谷浩一監督(時事通信フォト)
【甲子園歴代最多勝】西谷浩一監督率いる大阪桐蔭野球部「退部者」が極度に少ないワケ
NEWSポストセブン
がんの種類やステージなど詳細は明かされていない(時事通信フォト)
キャサリン妃、がん公表までに時間を要した背景に「3人の子供を悲しませたくない」という葛藤 ダイアナ妃早逝の過去も影響か
女性セブン
水原氏の騒動発覚直前のタイミングの大谷と結婚相手・真美子さんの姿をキャッチ
【発覚直前の姿】結婚相手・真美子さんは大谷翔平のもとに駆け寄って…水原一平氏解雇騒動前、大谷夫妻の神対応
NEWSポストセブン
大谷翔平に責任論も噴出(写真/USA TODAY Sports/Aflo)
《会見後も止まらぬ米国内の“大谷責任論”》開幕当日に“急襲”したFBIの狙い、次々と記録を塗り替えるアジア人へのやっかみも
女性セブン
創作キャラのアユミを演じたのは、吉柳咲良(右。画像は公式インスタグラムより)
『ブギウギ』最後まで考察合戦 キーマンの“アユミ”のモデルは「美空ひばり」か「江利チエミ」か、複数の人物像がミックスされた理由
女性セブン
違法賭博に関与したと報じられた水原一平氏
《大谷翔平が声明》水原一平氏「ギリギリの生活」で模索していた“ドッグフードビジネス” 現在は紹介文を変更
NEWSポストセブン