芸能

畑正憲氏の「よーし、よしよし」 科学的根拠が存在

書斎には2万冊の蔵書が並ぶ

 1980年よりテレビ番組『ムツゴロウとゆかいな仲間たち』で人気を博した畑正憲氏は、81歳となったいまなお動物に愛情を注ぎ続けている。ムツゴロウさんの愛称で親しまれた畑氏といえば、動物との独特な距離感が印象的だが、ああいったスキンシップにはどのような意味が込められていたのか? 北海道標津郡中標津町のムツ牧場で暮らしている畑氏を、ノンフィクションライターの山川徹氏が訪ねた。(文中敬称略)

 * * *
「ぼくは動物に触るとき『よーし、よしよし』ってやっているでしょう。あれも科学的根拠があるんですよ」

──科学的根拠ですか……。

「動物の身体を撫でるとオキシトシンという脳内物質が分泌されるんですよ。声でもオキシトシンは出るので、『よーし、よし』と言いながら撫でて試していたんです」

 オキシトシンとは「幸せホルモン」と呼ばれて、ストレスを軽減して幸せな気持ちを促すとして、近年注目を集めている。もちろん人間も分泌する。

「ぼくは大学院にいた約50年前からオキシトシンに着目していました。そしてあらゆる動物のおっぱいを触って、実際に吸って味を確かめて、オキシトシンが分泌されたことで起こる一頭一頭の変化を確かめてきたんです」

──実際に味わったんですね(笑)。どんな動物の乳が一番でしたか?

「優劣はないですね。でもあらゆる動物の乳を吸ってきました」

 他者であろうが、他の種であろうが、畑に排除するような狭量な考えはない。中学時代、私は『ムツゴロウの放浪記』『ムツゴロウの青春期』……と図書館にあるムツゴロウ本を片っ端から読んで、獣医になりたいと本気で考えていた時期がある。改めて振り返ると、私は、畑の分け隔てないフェアな視線に惹かれていたのだ。

【プロフィール】畑正憲(81)/動物研究者・1935年福岡県生まれ。満洲開拓団に家族で参加。6歳から小学校3年まで同地で生活。東京大学理学部卒業。学習研究社で記録映画製作に従事した後、作家として独立。1980年よりテレビ番組『ムツゴロウとゆかいな仲間たち』がスタート。多忙を極めたが、趣味の麻雀のためなら徹夜も厭わなかったという。

聞き手■山川徹(ノンフィクションライター)

※SAPIO2016年10月号

関連キーワード

関連記事

トピックス

山下市郎容疑者(41)はなぜ凶行に走ったのか。その背景には男の”暴力性”や”執着心”があった
「あいつは俺の推し。あんな女、ほかにはいない」山下市郎容疑者の被害者への“ガチ恋”が強烈な殺意に変わった背景〈キレ癖、暴力性、執着心〉【浜松市ガールズバー刺殺】
NEWSポストセブン
英国の大学に通う中国人の留学生が性的暴行の罪で有罪に
「意識が朦朧とした女性が『STOP(やめて)』と抵抗して…」陪審員が涙した“英国史上最悪のレイプ犯の証拠動画”の存在《中国人留学生被告に終身刑言い渡し》
NEWSポストセブン
早朝のJR埼京線で事件は起きた(イメージ、時事通信フォト)
《「歌舞伎町弁護士」に切実訴え》早朝のJR埼京線で「痴漢なんてやっていません」一貫して否認する依頼者…警察官が冷たく言い放った一言
NEWSポストセブン
降谷健志の不倫離婚から1年半
《降谷健志の不倫離婚から1年半の現在》MEGUMIが「古谷姓」を名乗り続ける理由、「役者の仕事が無く悩んでいた時期に…」グラドルからブルーリボン女優への転身
NEWSポストセブン
橋本環奈と中川大志が結婚へ
《橋本環奈と中川大志が結婚へ》破局説流れるなかでのプロポーズに「涙のYES」 “3億円マンション”で育んだ居心地の良い暮らし
NEWSポストセブン
10年に及ぶ山口組分裂抗争は終結したが…(司忍組長。時事通信フォト)
【全国のヤクザが司忍組長に暑中見舞い】六代目山口組が進める「平和共存外交」の全貌 抗争終結宣言も駅には多数の警官が厳重警戒
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《前所属事務所代表も困惑》遠野なぎこの安否がわからない…「親族にも電話が繋がらない」「警察から連絡はない」遺体が発見された部屋は「近いうちに特殊清掃が入る予定」
NEWSポストセブン
放送作家でコラムニストの山田美保子さんが、さまざまな障壁を乗り越えてきた女性たちについて綴る
《佐々木希が渡部建の騒動への思いをストレートに吐露》安達祐実、梅宮アンナ、加藤綾菜…いろいろあっても流されず、自分で選択してきた女性たちの強さ
女性セブン
(イメージ、GFdays/イメージマート)
《「歌舞伎町弁護士」が見た恐怖事例》「1億5000万円を食い物に」地主の息子がガールズバーで盛られた「睡眠薬入りカクテル」
NEWSポストセブン
和久井学被告が抱えていた恐ろしいほどの“復讐心”
【新宿タワマン殺人】和久井被告(52)「バイアグラと催涙スプレーを用意していた…」キャバクラ店経営の被害女性をメッタ刺しにした“悪質な復讐心”【求刑懲役17年】
NEWSポストセブン
幼少の頃から、愛子さまにとって「世界平和」は身近で壮大な願い(2025年6月、沖縄県・那覇市。撮影/JMPA)
《愛子さまが11月にご訪問》ラオスでの日本人男性による児童買春について現地日本大使館が厳しく警告「日本警察は積極的な事件化に努めている」 
女性セブン
女優・遠野なぎこの自宅マンションから身元不明の遺体が見つかってから1週間が経った(右・ブログより)
《上の部屋からロープが垂れ下がり…》遠野なぎこ、マンション住民が証言「近日中に特殊清掃が入る」遺体発見現場のポストは“パンパン”のまま 1週間経つも身元が発表されない理由
NEWSポストセブン