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2016.10.03 16:00  週刊ポスト

金田正一氏 がんの父に捧げた長嶋デビュー戦「4三振」秘話

 この年、ワシは56試合に登板して31勝14敗、防御率1.30という、現在のプロ野球では考えられないような数字を残した。親父の力が勝たせてくれたと思っとる。長嶋との初対決に始まり、親父を喜ばすためにフル回転したシーズンだった。

 シーズン中はほぼ毎日のように病院に通って試合の報告をしていたが、シーズンが終わっておよそ3か月後、1959年1月6日に親父は病院で亡くなった。

 ワシは最後まで、親父に「ありがとう」という言葉をもらっていた。親父は57歳という若さで亡くなったが、ワシも親父のために野球ができたし、親父もワシが勝てば喜んでくれた。正直、親父が亡くなった時は辛かったが、いまは違う思いもある。

 平均寿命が延びて、認知症になって子供の顔もわからず晩年を迎える人も多い。どんなに献身的な看病をしても、当人は家族のこともわからず死んでいく。家族も長生きはしてもらいたいが、身内の顔までわからなくなるのを見るのは辛いだろう。

 親父は、子供であるワシに感謝しながら旅立った。家族の顔も忘れて亡くなった親を持つ子供に比べて、ワシは幸せじゃないかと思う。あのシーズンの病室での光景は、ワシの心の中に永遠に生き続けている。

●かねだ・まさいち/愛知県生まれ。国鉄スワローズ(現・東京ヤクルトスワローズ)に入団し、日本プロ野球史上唯一の通算400勝を達成。引退後は日本プロ野球名球会初代会長を務め、野球解説者としても活躍。「カネやん」の愛称で親しまれている。

※週刊ポスト2016年10月14・21日号

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