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ドゥテルテ比大統領の言動から考える法治主義の限界

評論家の呉智英氏

 世界中が、テロや組織犯罪への有効な対策を見つけらず、かといって乱暴な対処はとれず戸惑っている。しかしフィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ大統領は施政方針演説で「麻薬王や資金源、密売人の最後の一人が自首するか、あるいは投獄されるまでやめない。彼らが望むならあの世に葬り去ってもよい」と述べ、超法規的殺人を実行している。評論家の呉智英氏が、ドゥテルテ大統領の言動から現代の良識と法治主義の限界について考えた。

 * * *
 フィリピンのドゥテルテ大統領の言動に注目が集まっている。これを報じるマスコミの姿勢に微妙なとまどいが感じられて面白い。現代の良識なるもののアキレス腱がそこに露呈しているようだ。

 ドゥテルテは、六月末に大統領に就任後、九月初めまでの二ヶ月間で千百人もの麻薬犯罪容疑者を殺害した。警察官のほかに民間の処刑団も動員し、裁判手続きもない「超法規的殺人」を行なった。一部に冤罪被害者も出ている。

 これに対し、アメリカなどを中心に国際的批判が起きた。しかし、ドゥテルテは強く反撥した。「私は独立国家の大統領だ。フィリピン国民以外の誰からも指図されるいわれはない」

 日本もフィリピン同様、アメリカの勢力圏にあり、特に革新派には反米意識が強い。だからといって、ドゥテルテはよく言ったと、拍手はできない。法治主義に反する強権政治家だからだ。保守派も似たようなものでドゥテルテを支持するわけにもいかず、やっぱり法治主義は大切だと、口ごもる。

 真の論点は、その法治主義という政治の限界なのである。

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