スポーツ

釜本邦茂氏 母の葬儀の日に1台のタクシーが迎えにきた

釜本邦茂氏が語る「母の死」の思い出

 自分の「最期」について考えるとき、最も身近な“お手本”となるのは、両親が亡くなった時のことではないだろうか。厳しかった父、優しかった母はどうやって人生を締めくくったのか──。日本サッカー協会顧問の釜本邦茂氏(72)が、「母の死」に際して見たこと、学んだことを明かす。

 * * *
 母は、とにかく亡くなる直前まで、元気いっぱいでした。

 大正生まれの母は一言でいえば、「ハイカラ」な人。マニキュアなんて当たり前で65歳にして耳にピアスの穴を開けて、70歳から日本舞踊を習い始めました。

 ちょうどその頃、千葉で2人暮らしをしていた両親が老老介護にならないか気がかりで僕の住む大阪に呼んだのですが、80歳を超えてもラメ入りのド派手な服を着て、僕の家内に「派手になって着られなくなったお洋服は私にちょうだいね」とよくねだっていた。

 そんな母は90歳だった2002年の年末、自宅でトイレに行くときにコタツのコードに足を引っかけて転倒し、腰を痛めて寝込むようになりました。

 年が明けて、心配した僕と家内は僕の家から10分ほどの距離に住む母を見舞い、「いつも寝てないで歩く練習もしてね」と声をかけました。テーブルで苺を食べていた母が、僕たちが帰る直前、「少し寝る」と布団に入ったことを覚えています。それが、母から聞いた最後の言葉です。

 母を見舞った後、僕はサッカー日本代表の五輪予選の団長としてチームに同行するため、関西国際空港に向かいました。先に帰宅した家内が念のため両親に電話すると、電話口で父が「婆さん(母)が起こしても起きてこないんだよ」と心配した声で話したそうです。

 慌てた家内は「救急車を呼んだほうがいい」と父に告げましたが、布団の中ですでに、90歳の母は眠るように息を引き取っていました。知らせを受けて僕も急遽、関空から引き返したけど間に合わなかった。2003年のことです。

 33歳の厄年で男の私を産んだことを生涯、自慢していた母は、「邦茂が出世したら私の手柄よ」というのが口癖でした。亡くなったときに改めて、“母が思っているような出世ができたのか”と思いを巡らせましたが、答えは出ません。ただ、要所で父を説得して、やりたいようにやらせてくれた母には感謝の思いばかりでした。

関連記事

トピックス

17歳差婚を発表した高橋(左、共同通信)と飯豊(右、本人instagramより)
《17歳差婚の決め手》高橋一生「浪費癖ある母親」「複雑な家庭環境」乗り越え惹かれた飯豊まりえの「自分軸の生き方」
NEWSポストセブン
食品偽装が告発された周富輝氏
『料理の鉄人』で名を馳せた中華料理店で10年以上にわたる食品偽装が発覚「蟹の玉子」には鶏卵を使い「うづらの挽肉」は豚肉を代用……元従業員が告発した調理場の実態
NEWSポストセブン
大谷翔平の妻・真美子さんの役目とは
《大谷翔平の巨額通帳管理》重大任務が託されるのは真美子夫人か 日本人メジャーリーガーでは“妻が管理”のケースが多数
女性セブン
殺人未遂の現行犯で逮捕された和久井学容疑者
【新宿タワマン刺殺】ストーカー・和久井学容疑者は 25歳被害女性の「ライブ配信」を監視していたのか
週刊ポスト
本誌『週刊ポスト』の高利貸しトラブルの報道を受けて取材に応じる中条きよし氏(右)と藤田文武・維新幹事長(時事通信フォト)
高利貸し疑惑の中条きよし・参議院議員“うその上塗り”の数々 擁立した日本維新の会の“我関せず”の姿勢は許されない
週刊ポスト
店を出て染谷と話し込む山崎
【映画『陰陽師0』打ち上げ】山崎賢人、染谷将太、奈緒らが西麻布の韓国料理店に集結 染谷の妻・菊地凛子も同席
女性セブン
高橋一生と飯豊まりえ
《17歳差ゴールイン》高橋一生、飯豊まりえが結婚 「結婚願望ない」説を乗り越えた“特別な関係”
NEWSポストセブン
西城秀樹さんの長男・木本慎之介がデビュー
《西城秀樹さん七回忌》長男・木本慎之介が歌手デビューに向けて本格始動 朝倉未来の芸能事務所に所属、公式YouTubeもスタート
女性セブン
雅子さま、紀子さま、佳子さま、愛子さま 爽やかな若草色、ビビッドな花柄など個性あふれる“グリーンファッション”
雅子さま、紀子さま、佳子さま、愛子さま 爽やかな若草色、ビビッドな花柄など個性あふれる“グリーンファッション”
女性セブン
フジ生田竜聖アナ(HPより)、元妻・秋元優里元アナ
《再婚のフジ生田竜聖アナ》前妻・秋元優里元アナとの「現在の関係」 竹林報道の同局社員とニアミスの緊迫
NEWSポストセブン
大谷翔平(左/時事通信フォト)が伊藤園の「お〜いお茶」とグローバル契約を締結したと発表(右/伊藤園の公式サイトより)
《大谷翔平がスポンサー契約》「お〜いお茶」の段ボールが水原一平容疑者の自宅前にあった理由「水原は“大谷ブランド”を日常的に利用していた」
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 岸田首相の脱法パーティー追撃スクープほか
「週刊ポスト」本日発売! 岸田首相の脱法パーティー追撃スクープほか
NEWSポストセブン