物販店舗や会社の受付、金融機関、病院、ホテル、空港、駅……近年、あらゆる場所で人工知能(AI)を備えた接客ロボットの導入が進んでいる。もっとも普及しているのは、ソフトバンクグループが2014年に発表したヒト型ロボットの「Pepper(ペッパー)」だ。
内蔵されたカメラやセンサーで人間の感情を読み取り、身ぶりや手ぶりを交えた簡単な接客や会話をするだけでなく、時には激しいダンスまで披露するペッパー。そんな親しみやすさやユニークな動きで話題を呼び、いまや1400社を超える企業に導入されているというから驚く。
だが、第2のペッパーを目指せと、ロボットの自前開発に乗り出す企業も後を絶たない。10月7日まで幕張メッセ(千葉市)で開催されていたエレクトロニクスショー「CEATEC JAPAN 2016」でも、様々な接客ロボットが異彩を放っていた。
新米ロボット行員「NAO」と名付けられたヒト型ロボットは、三菱東京UFJ銀行が店舗の接客や行員をサポートする案内係として本格導入を検討している一体だ。
ロボット本体はソフトバンクが出資する仏アルデバラン製ということもあり、ペッパーとは近い間柄だが、中に組み込まれた専用ソフトの開発は三菱UFJフィナンシャルグループ(MUFG)が手掛けている。
「外国人観光客も多い成田空港支店で試験的に導入し、英語や中国語など多言語対応しながら為替レートや窓口案内、観光案内などを行なっています。
人工知能は、大容量の情報を蓄積、学習できる米IBM製の『ワトソン』を使っているので、今後は会話力の向上や、例えば資産管理のアドバイスなど金融サービスに繋げられたらと思っています」(MUFGデジタルイノベーション推進部の担当者)
富士通が開発中の「ロボピン」は、クラウドAIやIoT(モノのインターネット)通信を駆使して複数のロボット同士を連携させているのが最大の特徴だ。
「会話した内容や情報が離れているロボピンにも瞬時に伝わることで、より質の高い接客サービスが実現できます。もちろん200近い動作で感情表現も豊かなので、集客力のアップも期待できます」(富士通研究所ロボティクス推進室の担当者)
ロボピンの形状はその名の通り、地図アプリなどの目印にある「ピン」を模したそうだが、どことなく「水中の天使」と呼ばれるクリオネにも似ており、実に愛くるしい。目の周りが赤く光って、羽根を上げて喜ぶような仕草に、会場内から「かわい~!」と歓声が上がっていた。