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終末期の患者との対話 反復と沈黙を繰り返し信頼関係築く

 看護師は、患者さんの目を見て、黙りました。励ましの言葉をかけたいところですが、しばしの沈黙を大切にすることも、苦しみを抱えた人にとっての「理解者」になるためには大事なのです。

 やがて患者さんは口を開きました。

「昨夜は隣の人がうるさかったんです」
「隣の人がうるさかったんですね」

 看護師は患者さんの言葉を反復してうなずき、目を見て再び黙ります。さらなる沈黙のあと、患者さんはこう言いました。

「…実は、家で待っている主人や子供のことが心配で、昨夜は眠れなくなりました」

 これこそが、患者さんが本当に聴いてほしかった気持ちです。しばしの沈黙が、秘めていた相手の思いを引き出しました。

 反復と沈黙を繰り返しつつ、「そうなんですよ」という「気持ちが伝わった信号」をキャッチし、うなずきながら相手の話を聴く。そうすることで初めて、会話の内容が深まり、信頼関係が少しずつできあがっていきます。

 もしみなさんが、人とのコミュニケーションに悩んでいるなら、ぜひこうした聴き方を実践してみてください。そうすることで、きっと相手から「この人は、自分のことをわかってくれる」と感じてもらえるようになるはずです。

「苦しんでいる人は、自分の苦しみをわかってくれる人がいると嬉しい」というのは、人生の最後が近づき、究極の苦しさの中にいる人だけでなく、万人が抱いている感情だといえます。わかってもらいたい気持ちを、うなずきながら反復してくれる。自分を肯定してくれる相手に、人は必ず心を開きます。人生最後の時が近づいたかたがたと向かい合える人は、日常の中での悩みや苦しみにも対応できるはず──私はそう思います。

※女性セブン2016年10月20日号

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