一方、JTBの夏旅CMは、今年も武井咲×桑田佳祐ソングでピカピカと輝く。ハワイを歩き、ホテルのバルコニーから見える景色に「わーっ」とまぶしそうな武井。その背景には桑田が軽やかに歌う『愛のプレリュード』が流れているという具合だ。
そして、最近、光ったのが「ダイハツムーヴ キャンバス」の稲垣潤一だ。朝ドラ『とと姉ちゃん』でお茶の間の人気者となった高畑充希が、砂浜で、イケメンのちょいチャラ男子に「私見た目だけで好きになるほどこどもじゃないのよ」ときっぱり言う。そんな場面に潤一ボイスが響けば、場は一気に盛り上がる。なんたって稲垣潤一といえば、代表曲は『ドラマティック・レイン』。場をドラマチックにするのは得意技である。
なぜ、大御所の歌声がCMで起用され続けるのか。
ひとつは美しい楽曲といまどきの女優たちとの組み合わせの新鮮さがある。戸田恵梨香、波瑠、武井咲、高畑充希、全員大御所たちがヒットチャートのトップを走っていた時代はまったく知らない世代だが、意外なほどすんなりと曲の世界になじむ。不朽の名曲、歌声の強みだ。
が、一番の強みは、大御所たちのLPやCDを買い、熱中していた世代が、テレビから彼らの曲のイントロや歌声をワンフレーズ聞いただけで「おっ」と思わず目を止めてしまう条件反射効果だろう。
いまどきの曲はさっぱりわからなくても、「あのころ、よく聞いてたよね」、スバルCMの美女に言われて、「うんうん」とうなづいてしまう人口の層は厚い。ターゲットは絞られているのである。