ライフ

島田裕巳氏 父の最後から学んだ「人間としての自然な死」

「親捨て」を提唱した宗教学者の島田裕巳氏

 自分の「最期」について考えるとき、最も身近な“お手本”となるのは、両親が亡くなった時のことではないだろうか。厳しかった父、優しかった母はどうやって人生を締めくくったのか──。宗教学者の島田裕巳氏(62)が、「父の死」に際して見たこと、学んだことを明かす。

 * * *
 私は著書『もう親を捨てるしかない』で、「親捨て」を提唱しました。

 頻発する介護殺人や介護心中に見られるように、現代の「家族」は極端に疲弊しています。自分を犠牲にしてまで親の面倒を見るのは本当に正しいことなのか、親子共倒れを避けるにはどうすべきなのか──そんな思いで「人非人」との批判も覚悟で提案したのが「親捨て」でした。

 そうした考えには、10年前の父の死が影響しているのかもしれません。

 大正生まれの父は太平洋戦争でラバウルに従軍し、戦後は工務店に勤めました。高度経済成長の波に乗り、仕事は順調で羽振りがよく、私は“お坊ちゃま”として育ちました。

 ところが、私が17歳の時、父の勤める会社が倒産して、家を失った一家は大阪に引っ越しました。公立の進学校に通っていた私はひとり東京に残り、賄い付きの狭い下宿で暮らし始めました。それ以来、父と暮らしたことはありません。

 その後、東京で妹夫婦と同居を始めた父は長く生きましたが、さすがに80歳を過ぎてからは体力が落ち、外出もしなくなりました。

 亡くなる前の父は内臓の機能が弱っていて、腎臓の数値を見た医者が「生きているのが不思議。手の施しようがない」とサジを投げたほど。あまりに苦しそうにしていたので、医師がモルヒネを投与すると精神が高揚してハイになったようで、昔の思い出を楽しそうに語っていました。

関連キーワード

関連記事

トピックス

詐称疑惑の渦中にある静岡県伊東市の田久保眞紀市長(HP/Xより)
《学歴詐称疑惑の田久保眞紀・伊東市長》東洋大卒記者が卒業証明書を取ってみると…「ものの30分で受け取れた」「代理人でも申請可能」
NEWSポストセブン
オンカジ問題に揺れるフジ(時事通信)。右は鈴木善貴容疑者のSNSより
《フジテレビに蔓延するオンカジ問題》「死ぬ、というかもう死んでる」1億円以上をベットした敏腕プロデューサー逮捕で関係する局員らが戦々恐々 「SNS全削除」の社員も
NEWSポストセブン
キャンパスライフを楽しむ悠仁さま(時事通信フォト)
《新歓では「ほうれん草ゲーム」にノリノリ》悠仁さま“サークル掛け持ち”のキャンパスライフ サークル側は「悠仁さま抜きのLINEグループ」などで配慮
週刊ポスト
70歳の誕生日を迎えた明石家さんま
《一時は「声が出てない」「聞き取れない」》明石家さんま、70歳の誕生日に3時間特番が放送 “限界説”はどこへ?今なお求められる背景
NEWSポストセブン
一家の大黒柱として弟2人を支えてきた横山裕
「3人そろって隠れ家寿司屋に…」SUPER EIGHT・横山裕、取材班が目撃した“兄弟愛” と“一家の大黒柱”エピソード「弟の大学費用も全部出した」
NEWSポストセブン
イスラエルとイランの紛争には最新兵器も(写真=AP/AFLO)
イスラエルとの紛争で注目されるイランのドローン技術 これまでの軍事の常識が通用しない“ゲームチェンジャー”と言われる航空機タイプの無人機も
週刊ポスト
ノーヘルで自転車を立ち漕ぎする悠仁さま
《立ち漕ぎで疾走》キャンパスで悠仁さまが“ノーヘル自転車運転” 目撃者は「すぐ後ろからSPたちが自転車で追いかける姿が新鮮でした」
週刊ポスト
無期限の活動休止を発表した国分太一
「こんなロケ弁なんて食べられない」『男子ごはん』出演の国分太一、現場スタッフに伝えた“プロ意識”…若手はヒソヒソ声で「今日の太一さんの機嫌はどう?」
NEWSポストセブン
9月に成年式を控える悠仁さま(2025年4月、茨城県つくば市。撮影/JMPA)
《模擬店では「ベビー核テラ」を販売》「悠仁さまを話題作りの道具にしてはいけない!」筑波大の学園祭で巻き起こった“議論”と“ご学友たちの思いやり”
NEWSポストセブン
1993年、第19代クラリオンガールを務めた立河宜子さん
《芸能界を離れて24年ぶりのインタビュー》人気番組『ワンダフル』MCの元タレント立河宜子が明かした現在の仕事、離婚を経て「1日を楽しんで生きていこう」4度の手術を乗り越えた“人生の分岐点”
NEWSポストセブン
元KAT-TUNの亀梨和也との関係でも注目される田中みな実
《亀梨和也との交際の行方は…》田中みな実(38)が美脚パンツスタイルで“高級スーパー爆買い”の昼下がり 「紙袋3袋の食材」は誰と?
NEWSポストセブン
カトパンこと加藤綾子アナ
《慶應卒イケメン2代目の会社で“陳列を強制”か》加藤綾子アナ『ロピア』社長夫人として2年半ぶりテレビ復帰明けで“思わぬ逆風”
NEWSポストセブン