「女性目線で書かれている部分もありましたから、共感するところも、そうじゃないところもあるけれど、92歳の佐藤さんの“角張った生き様”は老い先短い自分がどこに向かうか考える上で、とても参考になりました。歳をとってくると、“丸くなる人”と“角張る人”に分かれる。もちろん私は後者(笑い)。見るもの聞くもの、腹が立つことばかりですよ。
例えば若い人は、屋内なのに“これはオシャレです”と帽子をかぶったり、訳のわからない言葉を使ったり。そういうことがいちいち腹が立つんです。言葉にしろ、礼儀にしろ、日本は今すごく危険な状態にある。私にいわせれば、これらは絶対に許すべきことではないと思う。だからいわなきゃならない。“丸くなった年寄り”ばかりになると日本の伝統が崩れてしまう。
『笑点』の司会は体の都合で卒業させてもらいましたけど、今後は高座のマクラで、そういった“当たり前”のことを毒づいていかなきゃならない」
歌舞伎役者で人間国宝の二代目・中村吉右衛門(72)は「人間として守るべきものを教えてくれる本」と評した。
「昔の人の言葉、教えを守り、その上でようやく自分を出すというのが歌舞伎の世界。文明や文化が新しくなっていくなかでも、人間が守っていかなければならないものがある。この本はそのことを教えてくれた気がします。佐藤先生が色々なことに物申しているのは『文明よりもまず人間じゃないか』ということだと思う」
※週刊ポスト2016年10月28日号