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佐藤愛子著『九十歳。何がめでたい』 歌丸、吉右衛門の感想

『九十歳。何がめでたい』を読んだ桂歌丸の感想は

 御年92歳の作家・佐藤愛子氏が上梓したエッセイ『九十歳。何がめでたい』が20万部を超えるベストセラーになっている。

 同書は、佐藤氏が90歳、卒寿を迎えた際、「まあ!おめでとうございます」と祝福され、表向きは「ありがとうございます」と返事しながらも内心は〈卒寿? ナニがめでてえ!〉(以下〈 〉は同書より引用)。と思っていたエピソードを皮切りに、世の森羅万象を女性目線でぶったぎる痛快なエッセイ集である。

 例えば、元大阪府知事が出演する“日本の未来を真剣に考えるトーク番組”で「バスタオルを毎日洗濯する必要があるかないか」を討論していることに対しては〈町内会の寄り合いの茶飲み話じゃないんだよ!〉とバッサリ。

 東海道新幹線の「のぞみ」の時速が15キロアップし、東京新大阪間が3分短くなったことについては、〈何がめでたい。何でそう急ぐ〉〈「もっと便利に」「もっと快適に」もっともっとと欲望は膨張していく〉と釘を刺す。

 最近、町が静かになり、犬が吠えることすら騒音として許さなくなった社会にも噛みつく。〈町の音はいろいろ入り混ってる方がいい。うるさいくらいの方がいい。それは我々の生活に活気がある証據(しょうこ)だからだ。それに文句をいう人が増えてきているというのは、この国が衰弱に向う前兆のような気がする〉

 こんな鋭いツッコミが読者の共感を呼んでいるのだ。佐藤氏が投げかけた「長生きは本当にめでたいことなのか?」というテーマは、すべての中高年が自問自答すべき問題である。世の男性たちはこの本をどう読み、どう感じたのか──。

 5月に『笑点』(日本テレビ系)を卒業したばかりの落語家の桂歌丸(80)は「この本は年寄りの教科書ですね」と語る。

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