ほとんど報じられていないが、厚労省が罰則つきの規制案を示したわずか2日後の10月14日、省内で有識者らを交えた「受動喫煙防止対策助成金の今後のあり方に関する検討会」が開かれた。今年5月より開催してきた検討会は、今回がラストの4回目。とりまとめを行なう段階に入っていた。
検討会は飲食店と宿泊業を対象に行った受動喫煙防止対策のアンケートをもとに議論が始まったが、事業者の切実さばかりが浮き彫りになる調査結果が報告された。
たとえば、有効回答数がわずか「92」しかなかった飲食店のうち、「現在、受動喫煙対策を実施していない」と答えた店が51%にのぼったうえ、その理由として〈顧客の喫煙要望を断れない〉〈売り上げが減少するおそれがある〉〈喫煙室を設置する場所がない〉〈喫煙室を設置する資金的余裕がない〉など、課題の多さが目立った。
また、検討会の主旨である助成金に関しても、飲食店の50%が「(制度があることは)知っているが、利用は考えていない」と答えている。〈喫煙室以外を全面禁煙にすることが難しい〉〈助成率(2分の1)が低い〉〈助成上限額(200万円)が少ない〉〈性能要件が厳しい〉と、数々の“ネック”が上位を占めた。
「喫煙所設置の助成金を貰うためには、それなりの広さや排気性能、建物管理者や周辺住民の了解と、さまざまな条件をクリアしなければ無理。いざ設置したとしても、その後の維持管理費もバカにならないことを考えると、結局は大手の事業者に申請が偏ってしまう」(都内の居酒屋オーナー)
検討会では今後、活用率を上げるための方向性が確認されたが、あまりにも現場の実情と乖離した国の受動喫煙防止対策──。事業者にとって必要な制度であることは明らかなだけに、金額のアップや助成率の拡大など、制度のさらなる改善が期待される。