「普段は“親の期待に応える”とか考えてなかったんですが、こういう事件を聞くと、親の顔が浮かびました。ぼくは地方出身で、親は共働きの公務員。決して貧乏とかではないけれど、それでも仕送りは親に相当の負担をかけています。だから改めて意味がある時間を少しでも多く過ごしたいと思いました。実際、そう思っている学生も多い。
ですから“最近の若者は”とか“勉強ばかりしている東大生は”という枠でくくらないでほしい。“東大だから頭いいし、心身共に素晴らしい”ということはないんです。“東大なのに”“慶応なのに”と言うけど、それは大人がその大学の学生を神童と思っているからでしょう。東大だろうと、慶大だろうと、バカな奴はバカなんですよ」
評論家の呉智英さんは「強姦事件は三流、四流の大学でも水面下にはたくさんあり、エリート校だけの問題ではない。一般的な若者の間で起きているというのが、全体像としてある」と言う。その背景として、大学進学率の増加を指摘する。
「大学進学率は、戦後1950年代までは、人口の約1割。だから特に地方では、大学に進学することだけでも立派なことでした。それが2005年以降、大学進学率は50%を超えたことから、全体として大学生の質やエリート意識、自尊心がなくなってきた。もちろんおれは東大だ、慶応だっていうのはあって、現にかなりの割合の人が高級官僚とか超名門企業のビジネスマンになるわけだから、エリート意識はありますが、エリート意識の強弱が違う。戦前の帝大では、各学部の成績優秀者には天皇からの褒章として銀時計が授与されていました。当時の天皇といえば、神様だったわけですから、その重みは学生側にもありました」
※女性セブン2016年11月10日号