オリジナル曲だけでなく、長きにわたり休養しているちあきなおみの曲を歌ったり、吉幾三や和田アキ子、そして美空ひばりさんの名曲や、知る人ぞ知る名曲を歌いあげる神野美伽。
実はこの日、私は、『エンジン01文化戦略会議』「動物愛護委員会」をまとめてくださっている作詞家で音楽評論家の湯川れい子氏や同じく作詞家の東海林良氏、経営コンサルタントの堀紘一氏らと並んでステージを見守っていた。その委員会には神野さんも参加していて、近年はペットの保護や里親探しにも熱心。東日本大震災で飼い主を失った猫や、障害をもった犬を保護し、同居している。
つまり、私がこのコンサートに行ったのは、ある意味“お付き合い”だったし、知っている曲も少ないし、果たして楽しめるのだろうかとやや不安な気持ちで席に着いたのである。
だが、しょっぱなから彼女の歌唱力と人間掌握力の強さに度肝を抜かれ、途中から感想を書かずにはいられないという衝動にかられた。
この日、仲間内では湯川さんだけが手にしていたセットリストを彼女が帰りがけスッと私に渡してくれたのは、私の何が何でも書きたいという想いが顔に出ていたからだと思う…。何事も現場主義の私だが、やっぱり現場に足を運ぶのは大事だし、行ってヨカッタと心から思えるコンサートだった。
アンコールで神野美伽は客席の誰かと目が合ったように思えた途端、顔をクシャクシャにして泣き出した。後で湯川れい子さんに聞いたら、「(元夫の)荒木とよひささんがいらしていたのよ」とのことだった。
神野からも「実は、いつも同じ席で見てくれている」と…。
元夫・荒木とよひさ氏は言わずと知れた日本を代表するヒットメーカーのお一人。ベースには間違いなく荒木氏との出会いや指導がありながら、近年は後藤次利氏と連続配信アルバムという企画にチャレンジしたり、NYで出会った大江千里のアドバイスを素直に受け止め、新たにチャレンジをしたり、小原孝氏を始めとする多くのミュージシャンにも刺激を受けながら、神野美伽は間違いなくブレークスルーしたと言えよう。
繰り返しになるが、とにかく抜群に歌がうまく、あらゆるジャンルを歌いこなせる力のある人だ。
12月2日からは大阪・新歌舞伎座で「神野美伽特別講演」が始まる。松竹新喜劇の役者から、篠笛奏者の佐藤和哉氏、クロマチックハーモニカ奏者の南里沙氏とのコラボ、さらには「都はるみを唄う!」というコーナーもある。第二部のサブタイトルは「これが天下の神野節」だ。
今年は広島東洋カープのリーグ優勝で「神ってる」というワードが間違いなく『新語・流行語大賞』にランクインするだろうが、神野美伽の歌もまた「神ってる」と言っていいし、進化、いや“神化”しているのである。
ぜひ、ナマで聴いてほしい。そして文句なしの代表曲となるヒットを飛ばしてほしい。