◆全視野を埋め尽くす仮想世界

 助手席に座ると高速で走り始める車。疾走する車のドアを左手で押し開けてみる。路上の白線がビュンビュンと凄いスピードで後方へ飛び去っていく。後ろから追いかけてくる車が見えた。背筋がゾクッとする。

 怪しげなバイクと車が近づいた、と思ったらいきなり銃を乱射してきた。慌てて応戦。銃を握り、弾を装填して相手のタイヤを狙って撃ち返す……従来のシューティングゲームとケタ違いに生々しいのは、360度、全方向を映像に取り囲まれているから。私が頭を動かすと、景色はめくるめくほど変わっていく。まさに現場のリアル感。

「その実在感こそ、PS VRの魅力であり最大の特徴です」とSIEグローバル商品企画部・高橋泰生氏(41)は言う。これまではいくら巨大画面であってもフレームに囲まれていて、それが現実と非現実の「境」になっていた。しかしPS VRは視野全てをゲーム世界が埋め尽くす。

「広い視野角が臨場感を高めているだけでなく、VRヘッドセットには頭の動きや傾きを外部の専用カメラが検知するLEDライトを搭載。さらに、ジャイロセンサーや加速度センサーを組み合わせることで頭がどう傾いたか、視線をどこへ投げたか、向きや位置を正確に測定し、映像に反映させていきます」

 開発当初は画面に液晶を使用。しかし最終的に有機ELを採用しました、と高橋氏は続ける。

「VRの特性に最適な素材をと考え、オリジナルパネルを作り上げたのです。有機ELを採用することで画面の応答速度を0.018秒未満にすることが可能になりました。ブレや残像感のない、キレのある表現が実現できました」

 VRによる実在感や臨場感を創り出す上で、最も大事になることとは何でしょう?

「視覚情報と体の情報とをマッチングさせることですね。目というのは実はものすごく繊細な器官。たった0.02秒ほど頭の動きに映像が遅れただけでも違和感につながってしまう。そうした視覚と体感のズレが、『VR酔い』を生んでしまうのです」

「VR酔い」とは、初めて聞く言葉だ。

「車酔いのような違和感や不快感をいかに少なくできるか。技術陣が最も注力した点なんです」と高橋氏は言う。

「頭に被るVRヘッドセットも例外ではありません。敢えて後方に重りを入れて、頭の真上に重心がくるよう設計しました。装着感や違和感を最大限減らすための工夫です。ソフトも体の動きと映像との間に違和が生じないように、コンテンツ制作サイドと綿密に詰めていきました」

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