◆「399ドルターゲット」の狙い

 では、映像以外ではどうか。SIEならでは、の技術はどこに活かされているのか?

「360度、あらゆる方向から立体的に音が聞こえてくる3Dオーディオを独自に開発。実在感を際立たせる効果があります」

 もう一つ、手の動きを伝えるコントローラーも重要だ。私がコントローラーを動かすと、映像の中の手が滑らかに動いていく。触る、握る、ドアを開ける、銃を撃つ、といった動作が映像内で次々に実現されていく。視覚、聴覚、触覚。「仮想の夢」から「覚めない」よう、とことん作り込まれた、全く新しい娯楽世界がそこにあった。

 と、ハイスペックで綿密に作り込まれた新製品だが、意外だったのはその値段。何と4万9980円(専用カメラ含む。PS4は別途)、競合他社のVRと比べても破格の安さだ。振り返れば1980年代、「VR」の言葉が登場した頃のヘッドマウントディスプレイは300万円もしたのに……。

「PS VRのプロジェクトが始まったのは2012年。その後『399ドル』ターゲットを設定しました。普及させるためにPS4の本体価格(2万9980円~3万4980円)を大きく超えないことを意識してきました」

 実は低価格化の背後に社会の劇的な変化もあった。スマホの普及によって傾きや動きを感知するセンサー、ディスプレイ等電子部品の価格が下がり、手軽な価格でのVRが実現可能になったという。

「いつかは一家に一台、テレビのようにPS VRを行きわたらせたいと真剣に考えています。なぜならゲームに限らず、VRが表現する実在感こそコミュニケーションツールの土台になる、と思っているからです」

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