◆VR文化を創り出せるか
例えば北極圏でオーロラを体感するコンテンツ。遠出が難しくなった高齢者も、海外旅行のリアルな感動をVRによって楽しめる日が来た。
「そのためにはゲームをしない人も違和感無く、ごく自然に使えるツールであることが何よりも大切になるのです」
あたかもそこにいるような実在感を伝えるVR技術。その可能性は、とてつもなく広い。「臨場感」は人間のコミュニケーションの全てに関わってくるからだ。遠隔地の人と顔をつきあわせたような会話も、新しい家の間取りを体感することもVRで可能になる。医療なら手術のシミュレーション、企業では危険な作業や特殊な場所を想定した操作訓練……応用範囲は限りない。
かつて、「音楽を持ち歩く」というまったく新しい「体験文化」をウォークマンによって創り出したソニー。今後社会で活用の裾野が大きく広がりそうなVR技術を、「VR文化」へと、どのように仕上げていくのか。全てはPS VRの展開にかかっている。
●取材・文/山下柚実(作家)
【PROFILE】やました・ゆみ/五感、身体と社会の関わりをテーマに、取材、執筆。ネットでメディア評価のコラムも執筆中。最新刊は『広島大学は世界トップ100に入れるのか』(PHP新書)。その他、『都市の遺伝子』『客はアートでやって来る』 等、著書多数。江戸川区景観審議会委員。
※SAPIO2016年12月号