きっかけは全国キー局での漫才特番「THE MANZAI」だった。放送するたびに視聴率が伸び続け、漫才は一気に全国区の演芸となる。

 中でもスマートな里見まさとと、大きくボケるおさむのザ・ぼんちは異色だった。衣装も漫才師お決まりのスーツではなく、アイビー・ルックで若者向け。人気にのって出した「恋のぼんちシート」も大ヒットし、漫才師ながら歌謡番組にも顔を出し、漫才師として初めて武道館コンサートも開かれた。1981年はまさに「ザ・ぼんちで明け、ザ・ぼんちで暮れた」ほどだった(『吉本八十年の歩み』)。

 しかし、ブームはいつか飽きられる。漫才ブームは三年ほどで下火になり、その数年後には次々と漫才コンビが解散していった。ザ・ぼんちも1986年、結成から14年で解散することになる。

 その後は俳優業などにも挑戦していたまさとだが、収入は月七万ほどに落ちていた。これでは家族四人を食べさせてはいけない。

「頂点から一気にどん底でした。自殺したらどんだけ楽かと思った。オヤジの墓の前で、ホンマ泣きました」

 こうして消えていく漫才師は少なくなかった。その頃、まさとは亀山房代に出会う。「地獄の中の仏」だと跳びついたワイドショー番組の15分のコーナーを、亀山と二人で担当することになったのだ。

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