同じ時期、クライスラーは日本車キラーという触れ込みで開発したコンパクトカー「ネオン」を、これまた日本に大々的に持ち込んだが、キャバリエに負けず劣らず悲惨な結末を迎えたのだった。
このように、アメリカの自動車メーカーにとって、日本市場は鬼門中の鬼門。今年の秋にはフォードがついに日本市場から全面撤退。今年の1~10月の累計販売台数で何とか格好がついているブランドは、7779台を売ったジープだけだ。
果たして今後、トランプ氏をある程度満足させるだけ、日本でアメリカ車が売れることはあり得るのだろうか。
その答えはNOだ。一般に、輸入車業界ではよく、世界販売の1%、巨大メーカーで0.5%くらいは売れないと、その市場でビジネスをやる意味は薄いと言われている。世界販売が1000万台近いGMにその法則を当てはめると、年5万台くらいは売れてほしいところ。これはメルセデス・ベンツ、BMWなどと互角の数字で、到底非現実的である。
が、そこまで行かずとも、ひとまずアメリカのメンツが立つレベルの台数を目指すということであれば、話は違ってくる。
日本では、品質の低さや燃費の悪さといった過去のアメリカ車の低いイメージが定着してしまっている。また、調査機関の顧客満足度などのリザルトも低いため、今日のアメリカ車、なかでも中・上級クラスのモデルの出来が急速に良くなっていることはほとんど知られていない。
ふとした機会に今どきのアメリカ車に触れると、イメージと実物のギャップに驚かされる。筆者もアメリカブランドのモデルに乗る機会はまれなのだが、一昨年、日本で比較的手堅く売れているジープのSUV「チェロキー」をドライブした時、そういう驚きを覚えた。
高速道路、一般道とも乗り心地は驚くほど滑らかで、静粛性も抜群。そして、272馬力を発生する新鋭の3.2リットル直噴V6エンジンと9速ATの組み合わせが功を奏してか、高速道路を速い流れに乗ってクルーズしたときの燃費は13km/リットル近くと、日本の大型SUVと比較しても最良の部類に入るスコアだった。
こういう商品性の改良が行われているとなると、アメリカ車は日本車や欧州車とも異なる独特の魅力を訴えられるだけのポテンシャルは人知れず高まっているとみることができる。