努力とがまんを続けても、夢はかなわないこともある。しかし、かなえている人がいるのも事実。それも、結婚や出産、更年期などを経て50代になった今、ようやくに…。彼女たちの原動力は何か、38才でパン作りに目覚め、50才で開業した女性に実録取材。
50才にして開業した主婦の白井幸子さん(66才)。実はこの店、日本初のミルク酵母のパン専門店として話題の店だ。
「私の田舎には、既製品のパンしか売っていなくて、幼い頃は、釜から焼き上がる温かいパンを買うのが憧れでした。でも親に“女が店を開けるわけがない”と反対され、諦めていました」(白井さん・以下「」内同)
忘れていた思いが再燃したのは、38才の時。3人目のお子さんが幼稚園に入園したのを機に、ママ友と通い出したパン教室がきっかけだった。
「パン作りって単純なようで難しい。夏と冬でも作り方が違う。もっと知りたいと、パン作りにのめりこんでいきました」
そうして得た経験をもとに資格を取り、パン作りの教室を開いた。さらに研究を重ね「ミルク酵母」に出合ったという。
「このパンは、型に入れず、丸めて釜に入れる。そして好きな方向に伸ばすんです。子育てにも通じる作り方が気に入って、ドイツのパン作りなどを勉強しました」
主婦の趣味が高じてパン作りに夢中になる白井さん。続けられたのは、家族のおかげだという。当初、「硬いパンは嫌いだから」と猛反対していたご主人も、朝から晩までパンを焼き続ける妻の姿に降参。ミルク酵母パンの専門店を開業した時は、店の経理を担当してくれることに。
「専業主婦の身でパンに随分投資してきたから、元を取らないとと、開業はいわば背水の陣でした。夢は、ミルク酵母パンのおいしさを伝えていけたらって、ただそれだけなんです」
釜から焼き上げた温かいパンを売る。そんな少女の頃の夢は、家族の協力の下、かなえられたのだ。
※女性セブン2016年12月1日号