芸能

NHKの「日活」特集 「テレビ表現の大きな一歩」との評

意欲的なドキュメンタリーだった(NHKホームページより)

「あのNHKが!」──画面の前で目を見開いた視聴者も多かっただろう。それほど画期的な番組だった。11月16日夜9時からNHKのBSプレミアムで放送された『アナザーストーリーズ 運命の分岐点』。沢尻エリカがナビゲーターの硬派ドキュメンタリーだが、この日のテーマは「ロマンポルノという闘い 日活・どん底からの挑戦」だった。

 1971年からの17年間、日活ロマンポルノは「性」というテーマを扱う「ポルノ」でありながら、作品性の高い1100本もの映画を作った。また、後に映画『セーラー服と機関銃』を手がける映画プロデューサー・伊地智啓氏や、『リング』を監督する中田秀夫氏などの才能を育む土壌となった。

 しかし17年の間には、当局の介入など様々な波乱があった。その制作ヒストリーを「ロマンポルノの女王」と呼ばれた女優・白川和子らのインタビューとともに辿るのである。

 NHKがロマンポルノをテーマに番組を制作したことも驚きだが、より衝撃的だったのは、1970年代のロマンポルノの名作の濡れ場シーンをそのまま、バストトップも濃厚なからみも全部画面に映し出したことだ。

 たとえば1972年公開の『ラブ・ハンター 恋の狩人』(監督・山口清一郎)。公開から2か月で警視庁にわいせつ物として摘発され、フィルムが押収された問題作だ。同番組では、田中真理演じるヒロインがバストトップ丸出しで登場するシーンや、ヒロインの恋人の男性が全裸の女性たちと交わるシーンが紹介された。

 また、同じく1972年公開の『一条さゆり 濡れた欲情』(監督・神代辰巳)を紹介する際も、ストリッパーが乳房に塗りたくった泥を洗うシーンがそのままの形で流された。コラムニストの今井舞氏がいう。

「近年ではBPOなど各団体のクレームを恐れて、テレビ各局は女性の裸を映像にすることを自粛しています。しかし、今回はロマンポルノを『文化』と認めて放送を決断したのでしょう。NHKのBSプレミアムは独自の世界観をもって番組制作を続けるテレビ界の“結界”のようなもの。より不特定の視聴者層が見る地上波や民放では、まだまだ難しいかもしれませんが、テレビの表現において大きな一歩といえるでしょう」

※週刊ポスト2016年12月2日号

関連記事

トピックス

フリー転身を発表した遠野なぎこ(本人instagramより)
「救急車と消防車、警官が来ていた…」遠野なぎこ、SNSが更新ストップでファンが心配「ポストが郵便物でパンパンに」自宅マンションで起きていた“異変”
NEWSポストセブン
盟友である鈴木容疑者(左・時事通信)への想いを語ったマツコ
《オンカジ賭博で逮捕のフジ・鈴木容疑者》「善貴は本当の大バカ者よ」マツコ・デラックスが語った“盟友への想い”「借金返済できたと思ってた…」
NEWSポストセブン
モンゴルを訪問される予定の雅子さま(撮影/JMPA)
雅子さま、「灼熱のモンゴル8日間」断行のご覚悟 主治医とともに18年ぶりの雪辱、現地では角界のヒーローたちがお出迎えか 
女性セブン
米田
《チューハイ2本を万引きで逮捕された球界“レジェンド”が独占告白》「スリルがあったね」「棚に返せなかった…」米田哲也氏が明かした当日の心境
週刊ポスト
詐称疑惑の渦中にある静岡県伊東市の田久保眞紀市長(左/Xより)
「『逃げも隠れもしない』と話しています」地元・伊東市で動揺広がる“学歴詐称疑惑” 田久保真紀市長は支援者に“謝罪行脚”か《問い合わせ200件超で市役所パンク》
NEWSポストセブン
佐々木希と渡部建
《六本木ヒルズ・多目的トイレ5年後の現在》佐々木希が覚悟の不倫振り返り…“復活”目前の渡部建が世間を震撼させた“現場”の動線
NEWSポストセブン
東川千愛礼(ちあら・19)さんの知人らからあがる悲しみの声。安藤陸人容疑者(20)の動機はまだわからないままだ
「『20歳になったらまた会おうね』って約束したのに…」“活発で愛される女性”だった東川千愛礼さんの“変わらぬ人物像”と安藤陸人容疑者の「異変」《豊田市19歳女性殺害》
NEWSポストセブン
児童盗撮で逮捕された森山勇二容疑者(左)と小瀬村史也容疑者(右)
《児童盗撮で逮捕された教師グループ》虚飾の仮面に隠された素顔「両親は教師の真面目な一家」「主犯格は大地主の名家に婿養子」
女性セブン
組織が割れかねない“内紛”の火種(八角理事長)
《白鵬が去って「一強体制」と思いきや…》八角理事長にまさかの落選危機 定年延長案に相撲協会内で反発広がり、理事長選で“クーデター”も
週刊ポスト
たつき諒著『私が見た未来 完全版』と角氏
《7月5日大災害説に気象庁もデマ認定》太陽フレア最大化、ポピ族の隕石予言まで…オカルト研究家が強調する“その日”の冷静な過ごし方「ぜひ、予言が外れる選択肢を残してほしい」
NEWSポストセブン
大阪・関西万博で、あられもない姿をする女性インフルエンサーが現れた(Xより)
《万博会場で赤い下着で迷惑行為か》「セクシーポーズのカンガルー、発見っ」女性インフルエンサーの行為が世界中に発信 協会は「投稿を認識していない」
NEWSポストセブン
詐称疑惑の渦中にある静岡県伊東市の田久保眞紀市長(HP/Xより)
《東洋大学に“そんなことある?”を問い合わせた結果》学歴詐称疑惑の田久保眞紀・伊東市長「除籍であることが判明」会見にツッコミ続出〈除籍されたのかわからないの?〉
NEWSポストセブン