その真意を改めて尋ねると、松本選手は「好きで結婚というのは、あまり理解ができない」と独自の結婚観を語った。
「結婚とは、一生を共にするということ。この人が認知症になったときに、ちゃんと介護できるのか。添い遂げられるのか。そこまで含めて全部受け入れられると覚悟できたときに、初めて『結婚』するんです。私の中では結婚ってそういうものだと思っていて、その覚悟を持つまでに8年かかりました」
プロポーズは4月4日。お互い正座して向かい合って結婚の意思を確かめあったが、松本選手はリオ五輪が控えていたため、「入籍する日はこちらで考えさせていただきます」と伝えたという。
そしてその指にはまだ「指輪」はない。理由を聞くと「指輪は、簡単にあげたりもらったりするものじゃない」ときっぱり。
「指輪は、永遠の愛を誓うもの。大学生のころ、気軽に“結婚しようね”と指輪を贈りあったりする人もいましたが、それは私にとってはありえないこと。だから、夫には、つきあい始めてすぐに『指輪はいらない』って伝えたんですよ。今もまだもらっていないんです。東京五輪を目指していますし、現役の間は関節が動くので、指輪のサイズが変わりますから」
取材日は、入籍してからちょうど2週間。新婚ホヤホヤゆえ、あえて意地悪な質問をしたくなり、寝食を共にするようになって不都合はなかったかと聞くと、「ないです」と即答。そのために8年間互いに理解を深め、しかもここ数年間は半同棲生活をして理解のさらなる深化を目指した。実際、けんかはほとんどなかったそう。けんかをしないとなると、いよいよ不満がたまりそうだが、さにあらず。そうならないために半年に1回、会議を開くことが、松本夫妻のルールだという。
「会議はどちらからともなく自然に始まります。そこで、お互いに直してほしいところを1つだけ伝えるんです。2つ以上言っても直せませんから」(松本選手)
ちなみに、これまでの会議で伝えた内容を松本選手に聞くと──。