「3mは人の背丈の2倍の高さです。津波はものすごい力を持っています!」
「今すぐ、可能な限り高いところへ逃げてください!」
「決して立ち止まったり、引き返したりはしないでください!」
まるで津波の恐怖を煽り立てるようなテロップや呼びかけに、驚いた視聴者も多かったはずだ。だが、それこそがNHKの狙いだったのだ。広報局が解説する。
「放送ガイドラインで、津波の恐れがある場合は、避難の呼びかけを最優先にすることや、アナウンサーは強い口調で避難を呼びかけ、ロボットカメラの映像や気象庁が発表する情報などを活用し、避難を強く促すことなどを定めています」
NHKは3.11以降、避難が遅れて被害が広がったとの反省からガイドラインの見直しを重ねてきた。
それが初めて実施されたのは、震災から2年近くが経過した2012年12月、宮城県三陸沖で起きたマグニチュード7.3の地震である。
NHKの高瀬耕造アナが発した「東日本大震災を思い出してください」という緊迫した呼びかけは当時、波紋を呼んだ。NHKには、「震災を思い出してつらい」「もう少し冷静な呼びかけをしてほしい」との批判が数十件寄せられたという。
それでもNHKは「一人でも多くの命を救う」ために、この方針を強化する。
アナウンサーの呼びかけはさらに力強くなり、当初は「津波! 避難!」と漢字表記だったテロップも、「つなみ! にげろ!」と子供にも分かるひらがな表記に改めた。また、日本語の分からない外国人のために「TSUNAMI」と英語表記、さらにサブチャンネルとラジオ第2で英語放送があることも呼びかけた。
※週刊ポスト2016年12月9日号