法人タクシーの勤務形態は、1回の乗務で8時間ほど運転し、月22~24回乗務する「日勤」のほか、20~30時間のインターバルを挟めば最大21時間(3時間の休憩含む)連続で運転できる「隔日勤務」がある。ほぼ丸1日運転に従事していれば、タクシードライバーでなくても疲労が溜まるのは当然だ。
「どうしても不規則な生活で運動不足になりやすく、肥満体型の運転手も多い。会社からは定期健診のほかに、メタボ改善のプログラムや無呼吸症候群の検査なども勧められますが、なかなか病院に通う余裕がありません。
乗務当日の健康状態は、行きと帰りの『点呼』の際にちょっとした体調の変化でも報告することが義務付けられています。
特に高齢ドライバーは風邪っぽいと言うだけで休まされることもありますが、先日の事故のように突然死までは防ぐことができません。乗務中ではなく自宅の風呂場で倒れてそのまま亡くなる運転手の話もよく聞きますし、それだけ不健康になりやすい仕事であることは確かです」(前出の50代運転手)
とはいえ、業界を問わずに進む労働者の高齢化や、慢性的な人手不足を考えれば、タクシー業界の高齢化もさらに深刻になる恐れがある。
「高齢ドライバーの運転技能講習を頻繁に開いたり、より厳しい健康状態のチェックを徹底することはもちろん、不測の事態を避ける対策は必要不可欠といえる。自動ブレーキなど運転支援システムの標準装備、場合によっては運転手以外でもボタンを押せばクルマが止まる『緊急停止装置』も交通事故防止に役立つかもしれない」(前出・経済誌記者)
いま、人々の移動手段の進化形として、一般ドライバーでもタクシー運転手になることができる「ライドシェア(相乗り)」サービスの解禁が叫ばれている。だが、人命を預かるサービスである以上、高齢ドライバーの“暴走対策”の観点も含め、安全議論を尽くさなければならない。