実際、発泡酒や第三のビールのシェアが拡大するたびに増税され、ビール全体の市場はどんどん縮小している。ビール市場がピークを迎えた1994年を「100」とすると、1996年の発泡酒増税で市場は「99」に、2003年の発泡酒増税で「87」に、2006年の第三のビール増税で「85」に減少。2014年は「72」まで落ち込んだ。税制が専門の立正大学法学部客員教授の浦野広明氏が言う。
「財務省は今回の改正の理由のひとつとして、発泡酒や第三のビールなど、ビール以外のアルコール飲料開発に力を注ぐメーカー側の姿勢を俎上にあげ、“それが日本のビールの国際競争力低下を招いている”と断じています。
メーカー側が開発資源をビール以外に振り向けざるを得なくなるよう追い込んだのは、他ならぬ財務省です。ビール税をめぐる財務省の対応がいかに場当たり的なものであるかをよく表わしています」
今回のビール系飲料の税額改正に合わせ、財務省はワインと日本酒の税額を統一する方針も示している。実施されれば日本酒は減税になるが、ワインや缶チューハイは増税になる。庶民の間で増えているチューハイや格安ワイン愛好家にとっては懐の痛む話だ。
財務省とメーカーのイタチごっこは結局、ビールを愛飲する消費者から搾取していることに他ならない。ビールと税金にまつわる話は、昔から庶民イジメの歴史でもあるのだ。
※週刊ポスト2016年12月9日号