でも、笑いごとでは済まないのは、入れてから数十年がたった人の話。私が知る限り全員、ひとりの例外もなく後悔しているんだもの。長く生きていると、人の深いところに知らずに迷い込むことがある。
「おれの元の仕事? ヤクザ。年を取ると、こんなもんだよ」とワイシャツの襟の下から、原型をとどめないほど色あせた背中の彫り物を見せたのは60代のタクシー運転手だ。
彫り物を見せたくなくて、ひどい咳をしていたのに病院に行かず、自室で亡くなった50代のバーのマスターもいた。ファッションなら見せてナンボなのに、有名ミュージシャンはテレビでいろんなところを隠して、落ち着かない。
いやいや、外国人や今の若い人は、何十年たっても後悔しないし正々堂々だよ、ともし言われても、私は同じ湯船で手足を伸ばす気には、ならないと思う。遅れてる? ああ、何とでも言って!
※女性セブン2016年12月15日号