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さだまさしも罹った「放っておけない病」とは

 まったくもって、まさしさんは病気だと思っている。困っている人を見たら、放っておけない病気。

 そのまさしさんが、「風に立つライオン基金」を立ち上げた。あの名曲の名前をとった基金は、災害時の医療支援や復旧支援、命を守る活動をしている個人や団体への支援などを行なう。また、「高校生ボランティア・アワード」なども行ない、若い世代のボランティア活動も応援している。

「鎌田先生、基金の評議員になってほしいんだけど」と、まさしさんから電話があったときには、病気も病気、重症だな、と思った。

 ぼくは医者だから、“重症”の人を見放すわけにはいかない。治らない病気なら、なおのこと寄り添ってあげなければいけない。二つ返事で、評議員を引き受けた。

 夜、南富良野小学校の体育館で、コンサートを開いた。まさしさんの歌声とトークに、会場は笑い、泣いた。途中で、“千手菩薩”のぼくにお呼びがかかり、ステージへ上げられた。「風に立つライオン基金」の支援金を、町長に手渡す役目を仰せつかった。

「今回みたいに自然というものに牙をむかれた場合、われわれにはなすすべがないんです。だけど、人間というものはこれまで厳しい自然と立ち向かってきた。

 特に北海道の人は厳しい自然のなかで闘って今まで生きてきたんだから、こういう困難も笑って話せるときが来ると思う。もし歌えたら、大きな声で一緒に歌ってください」

 まさしさんが、そう言うと、「北の国から」のテーマ曲が始まった。

 アーアーアアアアアーアーと、まさしさんの歌声が、波動になって会場を包む。町長も、お年よりたちも、若い人たちも、ぐっとこらえていた思いが、涙になってあふれた。

“重症”のまさしさんに寄り添うどころか、さしもの“千手菩薩”も、お手上げであった。

●かまた・みのる/1948年生まれ。東京医科歯科大学医学部卒業後、長野県の諏訪中央病院に赴任。現在同名誉院長。チェルノブイリの子供たちや福島原発事故被災者たちへの医療支援などにも取り組んでいる。近著に『「イスラム国」よ』『死を受けとめる練習』。

※週刊ポスト2016年12月9日号

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