京都の食と言えば、雅な京料理やおばんざいなど、本格和食を思い浮かべる人が多いのでは? しかし、1000年の都、京は奥が深いもの。実は上質なお肉を出す店がとても多く、すき焼きや焼き肉、話題の熟成肉までさまざまな肉料理店が繁盛しているのだ。
京都の人の牛肉好きは筋金入り。それは、牛肉の購入金額全国位(総務省統計)が京都市、というデータからも裏づけされている。
そこで幼少の頃から祖父に連れられ、老舗の肉の味を覚えたという作家の柏井壽さんに、贔屓の『ビフテキ スケロク』で京都人の肉好き事情を聞いた。
「まずは京都人が新しもの好きだということ。伝統を大事にしながらも、目新しいものに飛びつくのは京都人の倣い。文明開化でいち早く洋食や肉食を取り入れたのも京都です。ふたつ目の理由は位置。日本を代表する但馬牛、近江牛、松阪牛の産地を線で結ぶと三角形ができ、京都はそのほぼ真ん中に位置します」(柏井さん・以下同)
しかもいずれも100km以内の近さ。この三角形を柏井さんは“名牛トライアングル”と定義する。京都はおいしい牛を入手するのに極めて有利な地。牛肉が身近なことに何の不思議もないという。
地理的優位性は価格にも反映される。東京などの都市に比べ、お値打ち価格で食べられるのは間違いない。牛肉をおいしく安く食べるなら、京都が一番なのだ。京都の老舗は敷居が高いイメージがあるが、柏井さんは気軽に入ったらいいと語る。
「すき焼きやしゃぶしゃぶを京都らしい風情の中で食べたいなら、老舗がおすすめ。すき焼きなら、肉の旨みを上手に野菜に含ませて焼く、仲居さんの腕の見せ所を体感してほしいですね」
分厚い肉そのものを楽しみたいなら、ステーキ。肉の味がダイレクトに伝わる『スケロク』のような昔ながらの“ビフテキ”はすばらしく、店の技量もわかりやすいという。
スケロクではビフカツも名物だが、京都でカツといえば牛肉。リーズナブルに食べるなら、ビフカツサンドをテイクアウトして、鴨川沿いを散歩しながら頬張るのもいい。
さらにイメージからはなかなか結びつきにくいのだが、昔から京都には焼き肉店が多く、通好みから食べ放題まで百花繚乱。『洗いダレ』と呼ばれるタレを出す店が多いのが特徴で、肉の脂を洗い流し、すっきり食べるのが京風だ。
最近では肉料理のバリエーションも増え、肉の会席やバルなどの店も増えている。そして牛の銘柄も名牛トライアングルだけでなく、全国各地から厳選された最高の牛肉が集まってきている。
「時代を経ても、京都はやっぱり牛肉天国なのです」
※女性セブン2016年12月15日号