「ヒゲの隊長」こと佐藤正久氏
参院選では「日本人ファースト」を掲げる参政党が躍進する一方、大敗した自民党では保守派の落選が相次いだ。保守派候補たちは、なぜ新興勢力の「日本人ファースト」に敗れたのか。
今回の参院選における自民党の比例得票は約1280万票で、6年前から約500万票も激減。新たに台頭した参政党は約740万票を得た。自民の獲得議席(比例)は19から12へと大きく減り、比例の保守派候補たちが当選ラインに届かない結果となった。
その1人が自衛隊イラク派遣(2004年)の第1次復興業務支援隊長を務めた「ヒゲの隊長」こと佐藤正久氏だ。「自衛隊の国軍化」を主張し、自衛隊OBの隊友会などを支持基盤に3回連続当選してきたが、今回は次点で落選した。
佐藤氏はもともと「日本人ファースト」は自分たち保守系議員が唱えたものだとしてこう語る。
「私が考える『日本人ファースト』とは、日本が持つ価値観をもとに日本人が幸せになること。日本では長い歴史のなかで一定のルールのもとでみんなが協力し合い、富を分け合う文化が培われてきた。資源に乏しく原材料を輸入に頼っているから、政府は自由貿易の国際秩序を守ることに力を注いできた。自分さえよければいい、日本さえよければ国際ルールに従わなくてもいいという考え方とは相容れない」
そうした自分たちの考えが支持を受けにくくなった背景に、トランプ米大統領の存在を挙げる。
「トランプ大統領のアメリカ・ファーストの影響で日本人ファーストが歪められていると感じます。トランプ氏は自由貿易を否定し、国際ルールを無視する。多くの人がそれに引っ張られているのではないか。日本でも30年間経済が停滞したことへの不満が溜まり、『自分だけがよければいい』という考え方が勢いを持ってきた。排外主義的な主張への支持にもつながる」
そこが自民党の敗北と参政党の躍進の一因でもあるという考えだ。
「参政党はもとは排外主義ではないが、一部の支持者は自分の生活の不満を外国人に結びつけ、排外主義的な解釈をして拡散された。参政党のなかに本来の日本人ファーストと、歪められた日本人ファーストが混在しているように見える。そうしたなか、“自民党は保守ではない”というイメージが広がった。
選挙中に“パンダを中国から呼ぼう”と主張した候補がいたことなどもあり、媚中と批判された。石破さんの責任も大きい。党内野党の人で、安倍(晋三)さんが掲げた『日本を取り戻す』のような軸がないから、ブレて見えてしまう」