堺:大泉さんもそうだと思うんですけど、まず相手の気持ちを考えるんです。「兄上はきっとこうしたいだろう」「信繁はこうしたいだろう」と思うので、なんか気持ち悪い2人になっていました(笑い)。自分がこうしたいというのを、お互いが後回しをするので、合わせ鏡のように同じ動きになっちゃうというか。それは演じていて楽しかったです。
――三谷幸喜さんからの要望は?
堺:キャストのみなさんが三谷さんと頻繁にメールのやりとりをするので、ぼくは控えようと思っていたんです。正解を聞くことになっちゃうし。…と思いながらも、時々メールをしていたんですけど(笑い)。
前半、台本を大事にしすぎていたのか、芝居が固くなってたようなんです。「もう10%ぐらい好きにやってください」とメールが来ました。10%っていう数字が、実に三谷さんらしいというか。野球で例えると、「球半個分ボールにしろ」と言われた気分でした(笑い)。そこには、三谷さんの厳しさが現れていると思います。普通だったら「もっと自由にやってください」とおっしゃると思うんですよ。10%は、実に厳しかったな。
現場で「そんな気持ちになっちゃったからこうしました」というのは、役者としては楽なんです。極端な話、台詞を変えたらいいわけですよね。語尾を変えるとか。でもぼくは今回、それをしたくなかったんです。
押し迫ってくると、脚本のミスが出てくるかもしれない。そんな凡ミスがあったとしても、それが今回の脚本なんじゃないかと思っていたので、一字一句きれいにやるのがいいなと思っていました。そこを、10%緩めてくれと言われたんですね。
――ラストの台本が届いた時の感想は?